震災被災者:二重ローン問題やっと523件解決!私的整理ガイドライン・金融機関の協力が不可欠
金融機関、一定の住宅ローン債権を放棄
東日本大震災により住宅を失い、新たに購入する住宅との二重ローン問題の解消が少しずつ動き出しています。政府や金融機関、弁護士、有識者などでつくられた「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」に基づき金融機関が一定の債権放棄に応じています。
震災の影響により震災前の借入の返済が困難になった場合、ガイドラインを利用することで現預金を500万円残すことができ、弁護士費用も国が負担。破産手続き(法的整理)とは異なり、個人の信用情報の登録など不利益も回避できます。
▼個人版私的整理ガイドライン運営委員会:「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」
相談件数4,670件、成立は523件1割強、準備中865件、合計3割
個人版私的整理ガイドライン運営委員会が9月6日に発表した相談件数は、平成23年8月22日から今年9月6日までの約2年で4,670件。このうち債務整理の成立件数は、523件と全体の約1割強ですが債務整理成立に向けて準備中の案件865件を合わせ成立となれば約3割に上ります。
地域別でみると宮城は310件、岩手が136件と続きますが、福島ではわずか52件。原発事故による除染・汚染水問題など影響は深刻です。債務整理成立に向けた準備中の案件でも宮城の457件に対し福島は11件と極端な結果となっています。
被災地の住宅ローンのリスケ7,901件、債権額は1,127億円
金融庁が被災地3県に所在する金融機関からヒアリングした調査では今年5月末現在、住宅ローンをリスケジュール(条件変更)している被災者は7,901件。住宅ローンの債権額は1,127億円に上ります。3県以外のリスケジュール件数も含めればさらに数は増え、震災から2年半、スピードアップが求められます。
東日本大震災では、地震による倒壊や津波で流された住居は約20万戸に上り、このうちの約8,000~1万件が住宅ローンを抱えたままとみられます。住宅を失い二重ローン問題で新たに新築できないでいる被災者は未だに多く実在しています。
義援金、支援金がリスケ返済原資にも
私的整理ガイドラインを利用し債務整理の成立数はようやく500件を超えましたが、さらなるガイドラインの周知も必要となります。被災者への義援金や支援金などの現金は、仮設住宅終了後に役立てられますが、これまでリスケジュールの返済原資となっていたのが実態。ガイドラインは不良債権を処理するためにつくられ、利用されず先送りすれば仮設住宅退去後に新たな住居費の負担となり金融機関にも影響が出ます。
被災地で住宅ローンを抱える被災者の連絡先は地域の金融機関が把握しています。今後は金融機関が牽引しガイドラインの利用を促し、二重ローン問題の解消、生活の基礎である住宅の問題が解決されて真の復興が待たれます。
●関連記事:「被災企業の二重ローン問題、債権放棄たった87億!見習え「栄光債権回収」は震災後2ケ月で88億円を債権放棄!」[2013.5.1配信]
[2013.9.13]
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