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阪神大震災教訓:万協製薬自治体支援で中古工場へ!売上50倍に「震災なければ会社の発展なかった」

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復興事業補助:店舗・工場も対象、3/4補助、申請は6月13日~24日
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経済産業省中小企業庁は6月9日、震災による復旧、復興に向けた第1次補正予算の成立を受け、復興計画に必要な施設や設備に対する補助の申請を受け付けると発表しました。青森、岩手、宮城の3県(福島県は別の期日で予定の見込み)では、被災地域の中小企業などが復興事業計画を作成。県が経済、雇用に重要な役割を果たすと認めた場合、施設や設備の復旧、整備に関わる費用を国が1/2、県が1/4補助とあります。申請は6月13日から24日まで行われており、全壊などで移転を考える事業所や工場は、政府、自治体の支援で負担を軽減し、事業再開を目指したいものです。政府は6月13日、自治体の津波対策への財源支援に住宅や公共施設の高台・内陸移転費用の補助を実施してきましたが、対象を拡充し、店舗や工場などにも適用する方針を固めました。津波による災害の予防と復興の両面で強い街づくりを支援します。

工場・事業所の移転:設備、従業員、取引先など判断を鈍らせる問題
工場や事業所の移転は全国の市町村から支援策が発表され、移転費用や賃料、生産機械などのリース料、雇用奨励などの補助、助成が得られ、中には家族の住居や、子どもの学校の手配まで細かい配慮がなされている自治体もあります。移転は愛着のある土地から離れることで、機械、従業員、取引先など経営者の判断を鈍らせる問題はあるものの、心機一転やり直すことも復活への選択肢です。

和歌山県:企業誘致に奨励金交付、従業員移転費・住宅費負担
和歌山県では5月2日、震災によって操業停止に追い込まれた被災企業の支援に、工場などを一時的に再開するための奨励金や補助金の要件を緩和すると発表しました。県内に工場や物流施設などの移転する場合の地元雇用が条件となっていましたが、緩和し転入雇用者だけでも奨励金の対象と拡充。また建物を賃貸する場合の賃料や、従業員の移転費、住宅費も奨励金の対象に緩和され、検討する企業にとっては事業再開への負担軽減は移転決意のキッカケにもなりうるでしょう。新しい土地で、まずは事業の復旧を目指したいものです。

仁坂和歌山県知事は、「混乱に乗じて人やものを引っ張ってきて得をするつもりわない」
和歌山県では、移転した企業に対し10年以内に撤退した場合、奨励金の返還を義務付けていましたが、被災地の地域経済の復興に支障が出ないように撤退した場合でも免除することを決めました。仁坂和歌山県知事は、「混乱に乗じて人やものを引っ張ってきて得をするつもりわない」と説明しています。各自治体では、震災後、移転企業に支援策、優遇措置を発表していますが、さらなる移転促進に緩和策の追加が望まれます。
▼和歌山情報館:和歌山県企業立地ガイド

万協製薬:工場被災、倉庫に在庫はあるものの、「このままでは生きられない」
平成7年1月に起きた阪神・淡路大震災で神戸市長田区の工場が被災。本社工場の移転を余儀なくされた万協製薬株式会社(三重県多気郡多気町五桂1169-142 代表取締役社長: 松浦信男氏)は、平成8年に三重県に移転。3階建ての工場は崩れ、1階部分の工場は完全につぶれてなくなっていたと松浦社長の報道がありました。長田区は被災地の中でも被害が大きく、火災で数千棟の建物が焼失し、消火できず絶望的な気持ちになったと言います。幸い従業員は無事だったものの、工場はがれきとなりました。従業員からも「これからどうするのだ!」と詰め寄られ当時社長の父が倒れ、「このままでは生きられない。生きるために立ち上がらなくては」と行動を決意したとあります。

阪神大震災で工場破壊、従業員解雇、神戸から三重へ移転
復旧の見通しが立たない中ではすぐに倒産と判断。苦渋の決断で全社員を解雇し、家族と友人4人でがれきを片付ける日々が続いたそうです。医薬品業界は類似品が多く少しでも納期が遅れると他社に切り替えられたりしますが、幸い倉庫に破損せずに残っていた在庫があり、被災1週間目には納品にこぎつけました。さらに同社が火災で焼失とのデマが流れ、在庫の買い占めに走る取引先から一年先までの注文が入ったと言います。他社の協力で生産ラインを借り、商品を製造、苦境を乗り越えました。その翌年、三重県の山間部に中古の工場があると聞き視察に出かけ、行政の好意的な対応や、企業誘致に積極的な地元の姿勢、援助もあるなどが移転を決めました。

売上50倍、従業員100名:会社の発展は被災が教師になった
同社は震災翌年、神戸から三重県に移転、一から出直すつもりで従業員を地元で採用。医薬品には素人ばかりでしたが、教育の意味を込めて松浦社長がすべて指揮をとることによって「私自身、経営者として成長していた」と語っています。震災を経て、自ら立ち上がり、人の成長を見守り苦境に負けない忍耐力が身に付いたといい「震災がなければ、これほど経営の問題に踏み込むこともなく、会社は発展しなかった。震災が厳しい教師になったのだと思う」と言います。今では従業員は100名まで増え、売上も以前の50倍、年間20億円を達成しました。

各自治体で企業の移転支援を拡充/新しい環境で発展を
各自治体では、被災した事業所や工場、夏の電力供給不足を懸念する企業から移転の相談が相次ぎ、追加措置、緩和策が発表されています。広島県では移転企業に対して助成金を交付していますが、ニーズを見越し20億円から35億円に上限額を引き上げ、対象企業も環境・エネルギー産業だけでなく幅広く認めるとしています。奨励金、助成金のほか、取引先見込み企業紹介など、行政の支援策も幅を広げます。企業は、政府や自治体などの数多い移転の支援、後押しによって再び操業を再開、雇用など地域活性を目指したいものです。新しい環境に雇用や取引先など事前に調査、研究し発展を遂げたいものです。


[2011.6.17]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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