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漁船・水産加工工場シェアリング、規模拡大で日本ブランドの水産加工品輸出拡大へ

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水産庁漁業者支援:漁船確保にシェアリングで負担軽減
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東日本大震災の津波によって岩手県三陸沿岸の街は大半が被災し、漁船は破壊、海に流され水産加工工場も大きな被害から操業が停止しました。震災から2ケ月が過ぎ、漁業が盛んな三陸では、漁船が破壊されていれば漁に出る事もできず、岩手県では震災緊急対策として農林水産省水産庁による「共同利用漁船等復旧支援対策事業」による共同利用の漁船、定置網確保の導入支援を行っています。同事業は、漁船を失った漁業者が、個人で新たに漁船を再取得することは困難でも、漁船のシェアリングによって漁業が再開できるというしくみ。漁協などが行う漁船の建造や中古漁船の購入、定置網の取得を対象に、水産庁と県が2/3を補助し、残る1/3の漁協など負担分については無利子の融資などで負担を軽減するとしています。
農林水産省は、震災の復興対策に向けた第1次補正予算に水産業対策として2,000億円を計上。このうち共同利用漁船等復旧支援対策事業には274億円を充てています。さらに被災漁業者や漁協などを対象とした実質無利子、無担保、無保証人化の災害復旧関係資金は、223億円となっています。

東北3県求職者3万人超え:国・県の補助で水産加工工場、早期再開へ
三陸沿岸には、いくらやさんまの缶詰など水産加工工場が数多く集積されていましたが、津波による被害で復興のめどはたっていないようです。岩手県では漁船シェアリングを水産加工工場にも拡大し、加工業者数社が共同で新設する工場に補助金を出す方針を決めたと報道がありました。沿岸部には小規模の水産加工工場が集積し、冷蔵庫や排水処理施設などを共同で使用するケースが多く、岩手県では、小規模加工業者の組合を対象に施設の共同利用に補助金で後押しします。
水産庁では漁船シェアリング同様に、加工工場や冷凍・冷蔵庫、加工機器、製氷機など、漁船到着からすぐに使用する施設、機器などの整備を支援しています。県と共同で2/3を補助し、水産業共同利用施設復旧支援事業を推進。漁協や水産加工業協同組合、市町村を通じて補助され、水産加工工場の早期再開を支援しています。
厚生労働省は5月18日、震災による雇用状況を発表。13日時点で岩手、宮城、福島3県のハローワークでの求職者は3万5,278人となり、4月22日時点から1万人急増しました。雇用保険の給付手続きも5月13日までの累計10万6,461件と前年同期2,4倍に達しています。水産加工工場の早期再開で、雇用の確保をお願いしたいものです。

食料品の輸出シェア、わずか0.6%に農水省1兆円規模に
小規模の加工業者が集まり、共同で水産加工をおこなうことで、より効率化され生産性の向上で生産拡大が期待されます。国内市場は少子高齢化により、この先市場の拡大は見込めません。一方で欧米では健康志向の高まりや、アジア新興国の経済発展により世界の食用水産供給量は年々増加傾向にあります。加工業者は、水産加工品の生産拡大で海外市場も視野に政府や自治体などの支援で、震災前以上の出荷を目指したいところです。
JETRO(日本貿易振興機構)の「平成22年・商品別輸出概況」によると食料品全体の輸出は、46億3、132万6、000ドル(約3,772億円)と前年比18.1%増と伸びたものの、輸出全体のシェアでは、食料品はわずか0.6%にすぎません。農林水産省では、昨年6月の新成長戦略実現会議で日本の農林水産物、食品の輸出額を平成32年までに1兆円の水準にする事を目標に掲げました。同省では、「持続的な漁業経営の成立を図りつつ、我が国周辺の豊かな水産資源を活用し、輸出の促進を図る」としています。しかし、これからの市場は海外とはいえ、小さな規模の加工工場で輸出はどこから手を付けていいかわからないことだらけでしょう。水産加工業者は規模を大きくし、政府支援のもと日本ブランドの食文化としてより多くの諸外国へ輸出拡大したいものです。

国際競争力向上にM&Aで加工工場規模拡大
南三陸町では5月11日、水産加工業者10社が同町新志津川漁港周辺に町に共同加工施設の整備や上下水の早期復旧を求める要望書を町長に提出。町内の水産加工業者は津波の被害を受け、単独での復旧を断念。「南三陸町水産加工復興組合」を発足し、共同での再開を目指す事を決めました。町では単独での実施は厳しいと国の支援を検討としていますが、このように前向きな復興を目指す組合にこそ水産業共同利用施設復旧支援事業を活用してもらいたいものです。
企業や組合など一つの大きな組織になる事で海外での競争力が向上し、より一層品質が高く、安全でおいしい日本の水産加工品が海外へ輸出するチャンスです。政府では、縮小する国内市場から企業の国際競争向上に向け今年2月に産業活力再生法の改正案を閣議決定。5月18日には参院本会議で可決・成立し7月上旬の施行に向け準備をしています。同法ではM&A(企業の合併・買収)支援にTOB(株式の公開買い付け)手続きの簡素化、長期資金の支援など企業の規模を拡大しやすくし、海外市場での交渉など優位にするとしています。
例えば、小規模の共同水産加工工場でも、連携して大きな組織=力となることで、海外のライバル企業に負けない競争力を持つことができます。
震災以降、危機に瀕している「日本ブランド」を、新しい枠組みを活用して大きく復活させてゆきたいものです。


[2011.5.23] 

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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