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金融機能強化法改正で二重ローン返済免除の見通し:公的資金で穴埋め、信金・信組に金融庁特例!


東北3県の地銀8行だけで条件変更依頼件数1万件超え
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東日本大震災による被害で事業所や工場、家屋が全壊となったり、津波によって流されたり復旧が遅れるなか、残されたローンが大きく影響しています。新しく建て直すにも新たなローンを組む必要があり、二重ローンとなるためしばらくは仮設住宅や避難先などで考える被災者もいます。
被害の大きい岩手、宮城、福島の3県の地方銀行でリスケジュール(条件変更)を行っている企業向け融資や住宅ローンが1万件を超えたと報道がありました。リスケジュールを行った企業は約5,000件、住宅ローンなどの個人向けは約5,100件と、東北3県の地方銀行8行分だけでも猶予額は数千億円に上るとみられます。企業や個人ともに再建には新たな融資が必要となり、金融機関では被災者・企業に対して無条件でリスケジュールに応じるものの、残されたローンは事業再建の足かせとなっていて、これからの課題が残ります。

日弁連:被災企業や個人が二重に陥る不安が数多く寄せられる
日本弁護士連合会(日弁連)は4月19日、被災した中小企業や住宅など、被災者・企業が二重ローンに困惑しないよう枝野官房長官に緊急提言をしました。震災後、日弁連や地元弁護士会で行った被災地での法律相談は、工場や倉庫、トラック、住宅、漁船などを失った被災者が、再建へ向け二重ローンへ陥る不安の声が数多くありました。日弁連は、「被災者の負担を免除する一方、残債を放棄する金融機関へ公的資金を注入すべき」と提言しました。さらに、被災者・企業が地域密着を維持できるよう配慮も要望しました。

金融相コメント:民間金融機関に一律債務免除要請は困難
菅首相は5月1日の予算委員会で二重ローンについて「救済措置を検討したい」と述べ、被災者・企業の負担を軽減し、再建への意欲を促す考えを示しました。一方、自見金融相は翌2日、「民間金融機関に一律に債務免除を求めるのは困難だ」と、金融規律から難しいと指摘。確かに一律すべての負担を軽減を求めるには公正的な面からも課題は多く残るものの、再建への救済措置は必要なものです。

枝野官房長官:地域企業・住民への負担軽減策か
枝野官房長官は5月12日、二重ローン救済策について「壁を突破できないか様々な模索をしている。適切、公平に対応できるか検討している」と、課題が難航していることを示しました。翌13日の報道には、金融庁が被災地にある信用金庫と信用組合に、公的資金を受けても返済しなくていい特例をつくるとありました。信金・信組は、金融機関でも銀行とは異なり、協同組合形式の金融機関で、会員や組合員の相互扶助を目的にしています。被災者、被災企業は再建のために新たに資金を借入れれば二重ローンを抱え、従来のローンが返済されない可能性が高くなります。この分の損失を公的資金で穴埋めできるようにするものです。

金融庁:公的資金注入は返済が原則!覆す特例措置盛り込む
本来、公的資金は返済されるのが原則で、金融庁では特例措置として中央組織の信金中央金庫や全国信用協同組合連合会とともに注入するとして、今国会で提出予定の金融機能強化法の改正案に盛り込むとしています。
被災者・企業にとってマイナスからのスタートは再建を志しても現実的な負担は避けられません。事業再生においても復活を果たすために、自宅や家族を失えば再生意欲も失われるものです。二重ローン問題には信金・信組含め、金融機関や実施地域など今後も課題が出てきそうです。

借入れで負担が増えても次世代に伝統受け継ぎ、雇用を守る
東北沿岸を代表する銘菓「元祖いかせんべい」を製造販売する有限会社すがた(岩手県宮古市黒田町 菅田正義社長)が5月11日に工場を再開。4代目の菅田社長は20日から始めたいと報道がありました。同社の工場には1.8mの津波が押し寄せ、機械類に大きな被害がでたものの、顧客からの数多くの励ましに再開を決意。工場設備など今までのローンが4,000万円残りますが、再建のために新たに3,000万円を借入れ、二重ローンを抱えて厳しい営業再開となりました。当面の生産は震災前の半分以下となってしまうものの、130年の歴史を持つ伝統の味と、解雇し、再就職を希望する8名の雇用を守ることができました。伝統と雇用を維持できた事は地域にとって財産です。その財産を守った企業が、地域を活性化するために必要な支援策が政府に求められます。規律正しくがまんする日本人は、危機的な状況の今こそ、必要な支援策など声を上げるべきでしょう。被災者・企業の意見、需要に自治体や政府が対応する事が、地域産業の活性化、復興への早道となります。被災地の地域産業が一つ一つが事業を再開し、新しい街を見に国内外から観光客が集まり、震災前よりも賑わう地域となって欲しいものです。


[2011.5.16]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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