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BRT交渉(4/29)自由貿易が震災復興の鍵:「平成の開国」進まぬTPP、EPA

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大震災原発事故でTPP開国は議論の外に、悲願の法人税引き下げは水の泡
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政府は昨年6月、新成長戦略実現会議で日本企業の海外での競争力強化にTPP(環太平洋経済連携協定)や法人税の引き下げを掲げました。しかし3月11日、東日本大震災の甚大な被害の対応から、TPPや税と社会保障の一体改革、公務員改革は先送りとなりました。危機的な状況だからこそ復旧や復興、そして改革を一体として捉え、TPPに対応した強い農業。海外市場を見据えた政策を打ち出していかなければ日本は世界から取り残されてしまうでしょう。

【解説】TPP(Trans-Pacific Partnership)は、米国やオーストラリアなど9ケ国が参加し、加盟する国同士の貿易を自由化する枠組みで、工業製品や農産物など加盟国間で取引される全品目について関税が段階的に撤廃する協定です。日本は昨年10月、TPPへの参加検討を表明しましたが、例外を認めない貿易自由化から農産物が打撃を受けるとし、反対の声も上がっています。

震災前:リスケ130万件超えで円滑化法1年延長に緊急保証半年延長の事実

震災前の国内の産業は、円高や少子高齢化から産業の空洞化が進み、年度末を迎えた3月、政府は中小金融円滑化法によるリスケジュール(条件変更)を1年延長。さらに中小企業の資金繰り支援に景気対応緊急保証を6ケ月延長しました。その恩恵から中小企業の倒産件数は減少しましたが、金融機関や民間調査会社などでは倒産の先送り、隠れ不良債権の拡大との声も上がりました。昨年の12月にはリスケジュールを申請した中小企業は130万件を超えるという震災前から危機的な状況にありました。復興に向けた政策は、今までと変わるもの、これまでと変わらないものを明らかにして支援しなければ、単に元通りに戻しただけでは次の津波や地震で同じ悲惨な被害を出してしまうだけです。これでは何の教訓にもなりません。

日本とEUのBRT交渉(経団連米倉会長が議長):経済の将来について共通のビジョンを!
日本とEU(欧州連合)の財界関係者は4月29日、ローマで開かれた「日・EUビジネス・ラウンド・テーブル(BRT)」の討議を終えたと報道がありました。BRTでは、日本とEUとのEPA(経済連携協定)交渉開始を視野に進められ、5月下旬に予定されている日・EU首脳協議で強い決意を示すよう相互、確認しました。議長を務めた日本経団連の米倉会長は、「日・EUの経済関係の将来について共通のビジョンを作り上げたい」とコメントしています。

【解説】BRT(EU-Japan Business Round Table) は、日本とEU各々、経済のニーズを探り利益を追求する会合を1つに合併。日欧産業の経済的成功を目的に平成11年設立、会合が開かれています。会合は日欧全産業を対象に民間から政府へ政策の提言をするための議論の場でもあります。(関連ページ:日欧産業協力センター

【解説】EPA(Economic Partnership Agreement)は、関税やサービス、知的財産権の保護や人の流れなど貿易の障害を撤廃していく協定で、TPPが多国間協定に対しEPAは2国間で締結されます。

貿易ライバルの韓国:7月からEUへの輸出、FTA発効で関税撤廃に

EUは今年3月末の首脳会議で日本の復興支援にEPAの交渉開始を前向きに検討する事で意見が一致され、「EPA交渉も含め、日本との協力を強化する」と、合意文書を採択しています。EUへの輸出ではライバルの韓国は、7月1日にFTA(自由貿易協定)が発効され、段階的に自動車や薄型テレビなどの関税が撤廃されます。日本はEUへの輸出に自動車は10%、薄型テレビには14%の関税がかけられ、EPA交渉・締結が遅れれば今まで以上に国際的競争力を失う事となります。

5億人の巨大市場:関税撤廃で自動車、電機・電子産業が期待
EUがEPAで日本に求める内容は関税撤廃と思えば、日本はEUのほとんどの工業製品に関税がかけられておらず、関税分野で得られるものはありません。EU側が指摘するのは、医薬品や食品添加物などの承認の簡素化や酒類の卸売り免許の緩和、鉄道やヘリコプターなどの入札要件の緩和です。EUは、欧州諸国の医薬品やワイン、自動車などの日本市場拡大を要望している一方、日本も逆にEUでの市場拡大を狙えるチャンスでもあるのです。JETRO(日本貿易振興機構)によると、EUは加盟27ケ国、人口4億9,974万人の巨大市場で、日本からEUへの輸出は、自動車が構成比13.3%、自動車部品5.2%、電算機類の部品が4.7%と上位を占めています。一方EUから日本への輸入では、医薬品が14.0%、有機化合物9.1%、自動車が8.0%となっており、相互、モノが流れればヒトの雇用も生まれ、カネが市場に円滑に流れるでしょう。
菅首相は昨年11月、経済連携に関する方針で今年3月中に規制改革方針にEUの要望を盛り込むとしたものの、EU側ではねじれ国会のもと日本が改革を出来るのか懸念され、3月1日にはシュバイスグート大使は、「政治的な宣言と実行には違いがある」と日本を厳しく指摘しました。

政府:後手後手の政権、信頼回復にスピード感の被災地復興を
震災から50日を過ぎ、復興に向けた第1次補正予算案がようやく可決、成立しました。地震や津波による被害から、原発事故や電力不足、サプライチェーンの混乱、農産物の風評被害と危機的な状況が連鎖し、国内はおろか海外にまで日本の信頼、信認が揺るがされました。政府の対応は、全て後手に回り、スピードの遅さ、国民への訴求・指導はあまりにも弱く、政府自体への信頼、信認も問われています。

補正予算成立:今こそ農漁業構造改革、強いリーダシップで今こそ着手
補正予算案が成立した今、政府は強いリーダーシップで国民へ震災からの復旧、復興、そして産業、農漁業の構造改革を行わなければ日本の産業は衰退の道を辿りかねません。TPP、EPA参加で企業はどうなるのか、農業の将来はどうなるかを強い意志で国民に訴えなければ反発だけが報道される事になるでしょう。「人がいない、時間がない」ではもう許されず、復興したときには市場がなかったという最悪の結果だけは避けてもらいたいものです。復興会議の数字だけのデータ分析だけではわからぬこともあります。政府、自治体など一体となって被災地で陣頭をとり、新しい産業、農業に復興を果たしたいものです。

[2011.5.6]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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