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商工リサーチ調査:震災倒産33社!/阪神大震災を上回るハイペース、対策が急務

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阪神大震災の2倍以上の被害/倒産も比例?110429_1.jpg
東日本大震災での地震や津波による直接的被害や、福島第1原発事故の放射能漏れによる風評被害や計画停電など、間接的な被害による影響で倒産に追い込まれる企業が出始めています。東京商工リサーチによると、震災による影響で倒産した企業は4月14日時点で14社あり、実質経営破綻した企業を含めると33社に達し、阪神・淡路大震災時に比べ、倒産に至るペースが早まっています。倒産企業は被災地だけでなく、取引先の被災、受注減少などから日本全国に渡っており、阪神・淡路大地震の2倍以上の被害に、今後、倒産に追い込まれる企業が増える可能性が高くなりそうです。


企業の復旧では倒産の先送り、新成長産業への転業
政府は、第1次補正予算案に信用保証協会の100%保証の「セーフティネット5号」や「復興緊急保証」の新設。月々の負担を軽減する中小企業金融円滑化法による金融機関やリース会社へのリスケジュール(条件変更)の延長など中小企業向けに金融支援を講じています。しかし、企業の復旧だけでは、震災前に戻るだけで新成長産業への転業や、海外新興国などへの輸出などの政策支援がなければ倒産の先送りだけとなります。

担保・信用保証がなくても思いきった復興企業の支援を
東京商工リサーチの菊池昭一社長は4月11日、「担保・保証がなくても、思い切った中小企業支援に踏み込んでもらいたい」と報道のインタビューでコメントしました。原発事故による放射能漏れの風評被害から、日本全国の観光地の宿泊施設はキャンセル、食品は輸出減少と、小売業など関連産業の倒産拡大を指摘しました。夏には電力の15%節電と、「夏場の電力不足で大手企業がフル生産を控えれば、下請け企業に仕事が回ってこない。東北地方から製造工場が撤退すれば、地元の経済的な復活は難しくなる」と分析しています。
震災後自粛、中止から「普段通りの生活」へ/増税報道で消費マインド喪失
震災、自粛によって消費意欲が低迷したものの、ようやく政府が訴える「普段通り」の生活になりかけた今、補正予算案の財源問題で、復興財源確保のために「増税」なると報道されれば財布のひもは固く閉ざされ再び消費マインド喪失となってしまうのです。
想定外の災害には、想定外の支援が必要なのです。金融機関からの資金調達は、信用保証協会の壁が高い中小企業などにも積極的な融資をお願いしたいところです。金融機関は、バブル崩壊後、「担保第一主義をやめ、中小企業の本質を見抜いて積極的に融資する」と言ったものの掛け声から20年経った現在も変わった様子はうかがえません。

阪神大震災の倒産:震災年は倒産減少、年を追うごとに増加、過半数は零細企業
帝国データバンクが4月8日発表した「阪神大震災後の倒産状況に関する検証調査」によると、震災のあった平成7年、全国の倒産件数は前年比8.0%増であったのに対し、被害の大きかった兵庫県だけを見ると26.7%減少となっています。しかし翌8年の兵庫県の倒産は、13.2%増と全国の倒産件数3.6%減から逆転。平成9年には、24.8%増と全国平均の倍近くに達しました。これは震災直後に被災企業に対して今回の震災のようにリスケジュールや手形の報告記載猶予、災害復旧貸付など政府の金融支援によって倒産を回避する事ができたからでしょう。しかし復旧はしたものの復興への政策がなかったのか年を重ね倒産は増加。不思議なことに復興需要のあった土木建設業すら長期にわたって倒産しました。中でも従業員5名以下の零細企業が過半数を占めていたと報告されています。
大企業をピラミッドの頂点に、中堅、中小、小規模、零細企業と下がるほど支援の恩恵を受けられないのは16年前も、今も変らないようです。地方自治体でも被災企業への融資や助成金、補助金なども拡充されてきます。利用できる融資や優遇措置、緩和策などはどんどん活用し、大震災による経営危機を知恵で乗り越え事業継続へ繋げたいところです。

「経済情勢に関する検討会合」という会議新設/増税議論か
菅首相と主要経済閣僚は4月22日、「経済情勢に関する検討会合」を開き、検討が遅れている重要政策や新たな政策課題について議論を始める方針で一致と報道がありました。菅首相は、「連休明けには復興や経済の在り方について具体的な方向性を示す段階に進んでいきたい」と語りました。会合では、与謝野経済財政相と玄葉国家戦略相が「重要政策の再設計」の必要性を説明。連休明けに政策課題を整理し「政策推進のための全体指針」としてまとめるとしています。報道によると、指針原案では電力不足からより製造業が海外へ拠点の移動することで産業空洞化を防ぐ事や、社会保障・税の一体改革を重点課題に掲げ、TPP(環太平洋経済連携協定)推進の明記は見送ったとありました。
復興後はTPPで活性化/社会保障・税、農業問題一体解決
確かに今は、原発事故の収束や被災地の復旧、電力供給、風評問題など重なり手が足りないかもしれませんが、ある程度権限を地方自治体や、現地へ派遣する閣僚などに委ね、TPP、社会保障・税、農業の問題にいま取り組まなければ、新しい復興ではなく現状の復旧だけに終わってしまいます。報道をによると被災地では農地にも被害にが出ています。また農業従事者の高齢化も進んでいます。農家の年間約80万円の年金では普通の生活は厳しく、農漁業で生計を補う農漁業者も多いのです。強く、やっていける農業と社会保障・税を一体となって取組み、サプライチェーンのグローバル化、TPPへの参加で海外との「ヒト、モノ、カネ」の流れ無理にでも作り、被災地東北を中心に農魚業が主要な輸出品になるように新しい発展を果たしたいものです。

[2011.4.29]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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