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農産物・畜産品に厳しい放射能暫定規制値:安全神話崩壊?国内での過剰反応が海外に影響

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食品安全委員会:年間5ミリシーベルトは妥当
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福島第一原発事故による放射能汚染で、県内外の農家、畜産業者がとても困惑しています。出荷まじかの野菜や、取れ立ての牛乳原資が生産者の目の前で廃棄され、やりきれない表情の姿が映し出され、被害は約100万円と報じていました。このような報道から口コミによって広がり、さらに不安を煽るなど評判もより悪く伝わっていきます。規制値内の野菜や乳製品であっても同じ地域の生産物だとして消費者に敬遠されていきます。典型的な風評被害に、生産者は太刀打ちできずにやるせない気持ちでしょう。
内閣府食品安全委員会は3月29日、放射性セシウムの暫定規制値が年間5ミリシーベルトが妥当であると厚生労働省に見解を通知しました。同委員会は、農産物や飲料水に含まれる放射性物質の健康への影響を専門家によって議論され、結果を同省に報告しています。

基準を厳しくすれば安全なのか?/食品安全委員会
現在の食品衛生法には放射能物質の基準はなく、暫定規制値は厚生労働省が原発事故後に急遽、原子力安全委員会の「飲食物摂取制限に関する指標」をもとに値を設定しました。健康への影響を第一に考えるであろう国内の暫定値は、諸外国の数値に比べかなり厳しいと言います。この暫定値を巡り、関東から東北地方8都県知事は3月28日、政府に見直しを求めました。茨城県園芸流通課では「数値をわずかに超えただけで出荷停止になっている農産物もある」と、やるせないコメントでした。検査する側は、80km制限の道路を81kmでスピード違反というマニュアル通りなのでしょう。国難に数字的な基準のほかに、検査手続きの基準も欲しいものです。判断基準を検査官みずから食品安全委員会へ持ち込んで欲しいものです。
食品安全委員会の14人の専門家は当初、「10ミリシーベルト以下での健康影響はない」と意見の一致をみたものの、5ミリシーベルトの現状を維持。その後、10ミリシーベルトに引き上げる余地を残しています。

国内全ての農産物を検査:韓国、香港、インド、マレーシア
玄葉国家戦略相は3月29日の閣僚懇談会で、暫定規制値について「国際比較でも厳しすぎる。このままだと何も食べられなくなってしまう」と述べました。民主党・岡田幹事長も同様に見直しを主張し、食品安全委員会も議論をはじめていると言います。今や日本の農産物や畜産品の風評被害は、国内のみならず海外へも伝わっています。
諸外国では日本国内の農産物に対し放射能検査が行われています。JETRO公表の資料によると、EU(欧州委員会)では、12都県の農産物に対し、輸出時と輸入時に抜き取り検査を。米国では福島、茨城、群馬、栃木産を通関時に検査を行うと言います。アジアでは、中国が、福島、栃木、群馬、茨城、千葉産を検査。韓国、香港、インド、マレーシアが過剰とも言える国内の農産物全てを検査すると言います。政府は3月29日、WTO(世界貿易機構)に対し、日本の農産物の輸入停止の動きを懸念。過剰反応で不当な輸入禁止をしないように要請しました。暫定値を超える日本の農産物は、今のところ国内外の市場に出回る事はないのです。

2年前トヨタ426万台のリコール:結果は車に異常なし、原因は運転ミス
計画停電が報道されると、街のスーパー、コンビニには食品や乾電池などが一瞬で消え、都内の浄水所では、乳幼児限定制限が解除されても飲料水は消えたままです。国内で厳しいと言われる暫定値以下の農産物や飲料水乳製品などが消費されなければ、当然、海外へは受入れてくれません。安全なものでさえ、危険と烙印を押され、日本の農産物や畜産物、水などの安全神話が崩れようとしています。過剰、過敏な反応によって農家や畜産業者に弊害を生じているのです。
平成21年8月、米国カリフォルニアで起きたトヨタ車の死亡事故で、トヨタは同年11月、約426万台という大規模なリコールを発表。米国内ではトヨタ叩きとなって、他の日本メーカーまでが販売台数が減少と言います。日本車=危険!とレッテルが貼られたのです。今年2月には、米高速道路交通安全局(NHTSA)と米航空宇宙局(NASA)の調査から米運輸省は「欠陥はなかった」と言い、死亡事故8件は運転手の運転ミスが原因と公表しました。

医療放射線協会:現在の「放射性物質」報道は過剰反応だ
農家や畜産業者が検査を受け、自信を持って出荷される生産品は、冷静に判断すれば普段通り食べるべきでしょう。医療放射線防護連絡協議会では3月27日、過剰とも言える反応から、放射性物質や放射線医療の専門家が集まり「福島原発災害チャリティー講演会」を開催。専門家らは「健康被害のリスクはきわめて低い」、「正確な知識を持ってほしい」と科学的に説明しました。企業、産業団体によって日本の農産物、畜産品や加工食品は海外に数多く輸出されています。今私たちが心がけることは、普段通りに野菜などを購入し水道水を飲み、普段通りの食生活を心がけていればメディアや口コミで、いづれは海外にも伝わり、トヨタ車のように「日本の食は安心」との評価に変わるでしょう。被災地の映像からトラブルに対して冷静だと海外から評価される日本人。原発事故で危機的な今こそ培われた
冷静さを保ち、国内でも過剰、過敏になりすぎないようにしたいものです。

日本の食の安心は賢い消費者になること
茨城県産の野菜を都内で販売する即売会の映像が報道されました。賢い消費者は冷静に対応していて全商品が完売だとのことでした。消費者は「マスコミは騒ぎすぎだ」とか「政府の基準は曖昧でわからない」といった声でした。過敏になって出荷自粛よりも目の前の食品を安全に食べる、対処の方法を広報することが大切でしょう。今の報道は問題のない農産物畜産品までが風評被害で、生産者が苦しい選択を迫られことは避けなければなりません。毎日のように原発事故のニュースが放映されている今、賢い判断のできる冷静な国民でありたいものです。
[2011.4.1]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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