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News Week誌「グローバル競争の勝者は日本」サプライチェーン崩壊で明るみに/夏は電力使用制限

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米国メーカー・パーツ調達の大誤算!誰も気にしない製品も日本製だった
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News Week日本版は3月25日、東日本大震災によって世界の自動車やIT関連製品のサプライチェーン(供給体制)が崩れたことで、米経済戦略研究所所長のクライド・V・プレストウィッツ氏のコメントを掲載しました。同氏は、「日本の混乱が長引けば、アップルやヒューレット・パッカードは深刻な問題に直面しかねない。今まで誰も気にしたことがないような製品、例えば小型マイクやメッキ素材、高性能機械、電子ディスプレイ、それにゴルフクラブやボーイングの新型旅客機ドリームライナーの羽に使われる炭素繊維など、すべて日本だけで作られているか、または主に日本で作られている」と報じました。暗く先行き不透明な報道が多い中、日本人としての誇りを感じるコメントです。自動車などは、1台当たり2万から3万点もの部品で製造されており、ほんの数ミリのバネ1つ不足しても完成車となりません。東北地方の製造業の被災により起きてしまった部品パーツ調達の誤算。世界のメーカーが早急な復旧、復興を望んでいます。

国内6割の企業が災害で需要減少
帝国データバンクが3月23日から31日に全国1万747社に行った「東日本大震災による自社への影響」の意識調査によると、「需要が減少。減少の見込み」と応えた企業が構成比36%の3,867社で、「やや減少。減少の見込み」が同比21.6%の2,322社で、合わせて57.6%と、約6割の企業が需要減少と、被災地以外の企業でも影響があるようです。米国の自動車メーカーでは、2次取引先までは把握しているが3次、4次、5次と下請けとなる企業までは把握できず、震災による部品調達の一極集中リスクが混乱を招きました。プレストウィッツ氏は、「今、国際的な部品調達網に日本が与える影響の大きさをアメリカのそれと比較すれば、グローバル競争の本当の勝者はアメリカではなく、日本だったことは明らかだ」とコメントを締めくくっています。
海外から見て日本の生産品は、安心で安全、納期厳守、精密な先端技術と評されます。それが今、災害による被害で崩れようといています。日本が一丸となって復興、供給体制を整備しなくてはなりません。

計画停電「我慢も限界!」の声に、代替え案「使用制限令?」
海江田経済産業相は、4月5日の会見で東京電力管内での電力供給不足について、強制的な使用制限の発動に「必要だと思っている」と応じ、7日には電力不足による対策骨子案が報道されました。政府案によると原則的に計画停電は止め、使用制限を設けると言います。政府は、企業に対して電力使用の上限を設け、上限を超えれば罰金が科せられる電気事業法27条の「電力使用制限令」を発動するとしています。制限令は、今年7月から9月の期間、家庭では強制ではないものの、大口の需要先である契約電力500kW以上の工場やビル、商業施設などの電力使用量を25%を削減。中小企業などの小口需要先でも20%強制的に削減すると報じています。被災企業は、災害から復旧したものの、次は計画停電で生産減少。さらに夏の使用制限と、製造業では充分な需要に応えられない状況におかれることとなりそうです。
 
計画停電の地域公平さよりも、与える影響の大きさを考える
計画停電では、都内23区の中で小規模・零細企業、住宅の多い荒川区、足立区だけが対象地域となり、生産に影響。また公平性から両区長が激しく抗議しました。東京23区では停電対象ではなかったのに荒川区や足立区の犠牲になった。不公平さを訴える前に地域産業基盤を考えて欲しいとの意見もあります。何が公平なのか考えさせられる一幕でした。我慢も限界があるでしょう

昨年夏のような猛暑になれば当初見込みより電力需要アップ
日本経団連では、工場など大口の需要先の電力使用量を25%抑制する「節電計画」に、日本自動車工業界では、曜日ごとに各業界の休業を決める「輪番休業」を計画に盛り込むよう要請しています。経済産業省の強制的な制限は、4月6日に行われた同省の「電力需給緊急対策本部幹部会」でも各省庁から異論が相次いだようです。東京電力では被災した火力発電所を復旧、相次いで再開させ、3,100万kWに急減した供給量は6日には、4,050万kWまで回復しました。しかし、夏場の見込み需要量は、5,500万kWと不足し、自家発電を行う石油、鉄鋼企業などの余剰電力の買取りや、タイ発電公社のガスタービン無償貸与、韓国・現代重工業からはディーゼル発電機の無償貸与と全力で電源の収集を行っています。
 
地震⇒津波⇒原発被害⇒放射能漏れ⇒風評被害⇒計画停電⇒復興遅延
電力制限は企業の生産性を低下させ、再びサプライチェーンに問題が生じます。政府や産業団体、企業と、より最適な節電法を探る出し、工場などへの影響が最小限となるよう論議してもらいたいものです。
地震、津波の災害に原発事故による放射能漏れ、風評被害。さらに電力の使用規制と、課題が連鎖し合い復興を遅らせる要因となっています。「苦しいのはお互い様」と、分かち合い精神からも公平性のある策が望まれます。諸外国から見た日本人は「我慢し、分かち合う」と驚嘆の声があがっています。美徳とされた我慢はときに復興を遅らせます。産業基盤の整備と生産性向上に向け、意見がどうどうと言えるようになりたいものです。

[2011.4.9]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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