被災失業7万人超の雇用確保:地域産業再生を急ぐ首長「被災企業の債務棒引き」を要請
被災3県:失業者7万人、被災地企業の3割が「労働者減らした」
労働局の集計によると 東日本大震災の被害が特に大きかった岩手、宮城、福島の3県で震災後から4月下旬までに失業手当の受給手続きを始めた人は計約7万人に上るとのことです。これは震災前に3県で雇用保険に加入していた計150万人余りの4.6%に当たりますが、被災により手続きが遅れている企業も多いことから、今後さらに増えると見られています。また、被災地域には雇用保険に加入していない農家や漁師などの個人事業主も多く、これらは労働局の統計には含まれていません。
5月2日に厚生労働省が発表した3月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、同3県の企業約300社のうち30%が「労働者を減らした」と回答しています。ただし、こちらも37%の企業は調査に回答していないとのことで、厚労省は「回答しなかった企業を含めると、最大で67%の企業が人を減らした可能性がある」と指摘しています。従業員が「増えた」と回答した企業は28%にとどまっていますが、復興事業が本格化するにしたがって上向くことが期待されます。
広がる被災者雇用:小売、サービス、介護等各社/短期の復興関連
産業界では被災者の雇用の動きが広がっています。大手スーパーなどでは被災地のハローワークを通じて求人募集を実施、被災者優先枠を設けるなどの対応で中途採用を行っています。また、被災地では被害を受けた介護拠点も多く、採用拡大の方針を示す介護サービス業者もあります。
被災地では「生活再建の目途がつくまでの間だけでも働きたい」という被災者の希望と、増加しつつある復興のための短期的な仕事のマッチングも進み、雇用機会は拡大の気配を見せています。
被災地首長「産業・雇用最優先」
岩手県の地元紙、岩手日報が独自に実施したアンケートでは、同県内で被災した沿岸部の12市町村長のうち半数が「産業再生・働く場の確保」を現在の最優先対策としていることが分かりました。甚大な被害を受けて、未だ多くの住民が避難所生活を強いられている自治体は「避難所生活が長引くと精神的負担が大きくなる」として、仮設住宅の早期完成を最優先としています。
沿岸部でも比較的被害の少ない自治体においては、基幹産業である漁業の再生を望む声が多く、「食料供給県として第1次産業従事者を再起させることが課題」(深渡宏普代村長)などの主張が述べられています。
自治体によっては、既に産業再生資金として独自に億単位の支援を行っているところもありますが、今後の恒久対策として、地域産業の創造と拡大は欠かすことのできない課題であることは間違いありません。
「借金棒引きの徳政令を」復興会議へ提案
宮城県南三陸町の佐藤仁町長は、政府の復興構想会議の五百旗頭真議長らに対して産業再生に向けて被災事業主が抱える借金の帳消し、大胆な規制緩和などを菅直人首相に提言するよう要請。「これまでの借金を棒引きにする大胆な政策を打たないと、企業経営の再生はあり得ない」と指摘し、新たな融資制度の導入ばかりではなく、債権放棄の「徳政令」の必要性を訴えています。
意欲を持って事業展開できる海のまちを作る
地震や津波の被害を受け、報道では「もう海が見えるところに住みたくはない」と悲観する住民の声も聞かれますが、多くの住民にとっては「海と共に歩んできた」という意識が強くあります。また、漁業従事者や観光産業などにとっては、大きな被害を受けたからといって簡単に諦めるわけにはいきません。
この未曾有の困難を地域一丸となって乗り越えるためにも、国、県、各市町村のグランドデザインを示すことが求められています。新しい東北は、自然エネルギーなど日本の技術を集結しつくりあげた街として、新しい産業や農漁業を含め、諸外国から観光、視察に訪れるほど魅力的な地域に生まれ変わって欲しいものです。
[2011.5.9]
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