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信用保証協会の緊急保証:承諾率たった12.5%/審査の長期化、罹災証明添付条件がネック


すぐにでも必要な資金に政府の金融支援:実態は時間ばかりがかかる
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東日本大震災を受け、首都圏で被災した企業が緊急融資のため信用保証協会へ相談するケースが増加しています。相談に訪れる企業は、「工場や倉庫が東北で全壊」といった製造業や、「マンションの壁が割れ人に貸せない」などの不動産業。「店舗が壊れ、自粛する客も減少」といった飲食業などが多くあるようです。4月末までに東京信用保証協会へ相談した企業は1,800件。これに神奈川、埼玉、千葉、横浜、川崎の5つの保証協会を加えると2,200件にのぼります。首都圏信用保証6協会では、相談の急増に午後5時の受付を7時まで延長、土日も開設し対応に追われています。

罹災証明の発行遅れ、手続き複雑さが原因で保証率たった12.5%
同協会のセーフティネット5号など災害関係保証は、限度額を28,000万円に、直接震災の被害を受けた中小企業などに100%保証するもので、主な事業所が被災地外であっても支店や工場、倉庫などが被災地域内にあれば適用の対象となり保証が受けられます。1都3県の6保証協会が4月末までに保証承諾をしたのはわずか274件と12.5%で保証額は47億円にとどまっています。低い承諾率は審査の時間や被災地での罹災(りさい)証明の発行の遅れにあるようです。

生活再建、事業復活に欠かせない罹災証明、発行率はわずか15.5%
信用保証協会の災害関係保証を受けるには、震災による被害に遭ったと言う罹災証明書を被災地の自治体に発行を依頼、保証協会へ提出しなければなりません。罹災証明は、自然災害などで建物などが被害を受け、市町村が損害状況を調査し認定するしくみで、全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊の4つに分類されています。
仙台市によると、4月29日現在、罹災証明の申請件数は39,572件に上っており、発行できた罹災証明は6,117件と15.5%にとどまります。被災した企業は、後片付けを済ませ、いざ事業の復活を目指し罹災証明を申請するものの、あまりの時間のかかり過ぎに苛立ちも覚えるでしょう。

地方自治体、罹災証明発行職員数に限界、応援の国税局員派遣も焼け石に水
一方、仙台市でも現地調査省略に航空写真での確認などで簡素化し、職員も休日返上で確認に努めています。ただし罹災証明の発行には税務経験のある職員が必要のため発行できる数もが限られているようです。担当職員は、窓口での対応に加え、殺到する問合せの電話の応対に、市議会内でも問題視。全国市長会などへ応援を要請。5月中旬までに全国の自治体や国税局職員など110人が応援に駆けつけます。1日も早い発行が望まれます。

罹災証明発行への地域格差:大船渡市は即日発行も
内閣府は、4月28日までに津波による建物などの流出や、1階天井まで浸水した地域を市町村が画定し「全壊」と認定できるよう決め、自治体の負担を軽減するとしています。同府では、1m以上の流水とがれきの流入が「大規模半壊」、床上浸水を「半壊」、床下浸水を「一部損壊」とし、自治体に通達。しかし航空写真での全壊や沿岸部の津波被害報告地域などは把握できるものの、曖昧な地域では、やはり現地調査が必要となり人手が足りない状況は続きます。街全体が津波被害に遭った岩手県大船渡市などは、4月28日から全壊とみなす約2,500戸について、申請があれば罹災証明を即日発行とあります。今後の発行への地域格差が懸念されます。
罹災証明は、金融支援を受ける以外にも公営住宅への引越など、生活の再建や事業の復活には欠かせません。1日も早い発行が望まれます。メディアには「一つになろう日本」と何回も訴えます。より一層、人手の足りない市町村へ、全国の自治体や税務関係者を融通し合いたいものです。浜松原発停止による国内の電力会社の電気の奪い合いも「ゆづりあい精神」をもって電力を融通し合って欲しいものです。

セーフティネットとは別枠の緊急融資「復興緊急保証」
政府は、復興に向けた第1次補正予算案を踏まえ、災害関係保証とは別枠の復興緊急保証の相談を5月16日から受け付けます。地震や津波によって直接被害を受けた企業に加え、間接的、原発事故によって被害を受けた企業。さらに被災地域の企業との取引関係で被害を受けた企業が対象も対象としました。限度額は28,000万円でセーフティネットとは別枠のため、最大で56,000万円の保証が受けられます。東北太平洋沿岸部の甚大な被害を受けた企業など、国が100%保証してくれる保証協会を活用し、復旧、復興に向けて動き出して欲しいものです。

民主党:二重ローン問題に専門チーム
新たな借入は、建物や機械など震災前までの負担に、加わり二重ローン問題が取り上げられています。民主党復興ビジョンチームは5月9日、「街づくりのための土地利用制限」、「医療介護など高齢者問題」、「エネルギー政策の信頼回復」という3つの復興チームに、「二重ローン問題」を新設することを決定しました。津波などで工場や住宅、漁船などが流されてしまっても負担が残れば「一からやり直す」わけにはいかず、復活意欲の抑制にも繋がりかねません。第2次、3次補正予算案に向けて身近な問題にチームが新設された知らせだけでもうれしいものです。政府支援の金融政策は、被災者、被災企業を救うことが目的です。政府や自治体、信用保証協会、金融機関などが円滑に行わなければなりません。「支援策は出した」、「書類を発行した」、「資金を貸し出した」と各々の業務をこなすのでなく、結果、その企業がどう復活したかを見届けて欲しいものです。円滑な流れで企業を復活させ東北の活況を取り戻したいものです。

[2011.5.12]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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