電子書籍:iPadが引き金!村上龍ら作家が設立!流通変革の出版界
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出版界に電子書籍のプロ少ない:村上龍談
作家の村上龍さんが11月5日、電子書籍を制作、配信する会社を設立したと報道がありました。村上さんは会見で「出版社には紙の本のプロはいるが、電子書籍のプロは少ない。特定の会社と組むと他社で出した既刊の本の電子化も難しい」との理由からです。自身の作品は今後すべて新会社で電子書籍化するほか、瀬戸内寂聴さんの未発表小説20作品やよしもとばななさんの書き下ろしエッセーなど新作も手がけていくようです。
電子書籍普及元年といわれる平成22年、iPadなど各メーカーからは小型端末が次々に発売され、シェアの獲得競争が激しさを増しています。出版社からは次々に過去の人気本が電子書籍化されていますが、有名作家自らが制作、配信することは初めてでしょう。出版業界に変革が起きようとしています。
エコで安く読める電子書籍
日本の本の流通は出版社から大手2社の取次業者(卸問屋)に集められ、そこから全国の本屋へ配本されています。流通の特徴として定額販売、返品可能な委託販売であるということで、書店では在庫負担、管理の負担がないのですが、一方では利用者からは売れない本はすぐに返品され、入替が繰り返され、書店に訪れるたび本がなくなっているといった不便さもあります。
村上さんが配信しようとしているシステムに比較すると、ネット上での広告だけの負担で、返品や入替えによる欠品や配送の心配もありません。しかも紙に印刷する必要も、取次業者、書店への配本、返品などの物流コストもかからないため、エコロジーにしかも安く本を読んでもらうことができるのです。
出版社4割が2期連続減収、1割が2期連続赤字
帝国データバンクの平成21年度の大手出版社10社の決算調査によると、8社が減収で4社が赤字と出版不況をのぞかせています。各出版社とも電子書籍化に力を入れているものの本業がさらに落ち込む懸念があると見ています。調査は出版社620社中40.2%の249社が2期連続で減収、11.3%の70社が2期連続赤字となりました。出版不況に若者の活字離れで、電子書籍はページをめくるたびに異なる音楽が流れるなど仕掛けが普及のポイントになるでしょう。
書店大手の紀伊国屋書店は、紙の本と電子書籍の両方取り扱う電子書店「紀伊国屋書店BookWebPlus」を年内にも開設すると11月5日発表しました。店舗を持つ書店としては国内初の取り組みということで今後の電子書籍普及の感があります。
すでに流通を排除した販売法
小説「パラサイト・イヴ」の著書・瀬名秀明さんは、一線で活躍する作家が集まって米アップル社の「iTune Store」の「AiR エア」で電子書籍を販売しています。「紙では高くなってしまうものも、電子書籍なら(安いので)出版できる」と、出版社、取次業者を介さずに直接消費者へ電子書籍を届けています。
出版業界の流通が変わっていくのでしょう。長い間、定価販売で価格競争もなく流通を変革させなかった産業にまったく新しい流通革命が起ころうとしています。音楽産業におけるレコードからCD、データダウンロードへと変わるように、出版業界でも同様の動きがみえます。
流通の変革と捉え、この流れに事業をどう結びつけるか常に情報をキャッチすることが必要です。
「借りたカネは返すな」もいづれ電子書籍となって出てくるのかもしれません。
[2010.11.8]
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