(9)事業再生の専門家とどう付き合うか
事業再生には様々なスペシャリストとのかかわりが必要となり、場面に応じて専門家の力を借りながら再生を進めていきます。大切なのは「あの先生に任せておけば大丈夫」と丸投げするのでなく、専門家の意見を聞きながら自分で決断し自ら行動することが、もっとも早い再生への道となります。同じ専門家でも意見が異なる場合もあるので何人かに会って決めるべきでしょう。。
--会計士・税理士--
どの企業も会計士や税理士と顧問契約を結んでいるかと思いますが、なぜバブル崩壊後、倒産件数が急増したのででょう。残念ですが会計士や税理士の先生方はインフレ基調には強いが、デフレ下の経営アドバイスは不得手だったのかも知れません。
しかしながら、時代の必要性から事業再生を専門とするコンサルタント事務所に足を運ぶ先生方が多くなってきています。事業のデューデリジェンスの際には話を聞いたり、決算書も作成を依頼しています。
会計士・税理士・ターンアラウンドマネージャーが一体となり、再生を進められればいいのですが、なかにはうまくいかない場合も出てきます。不動産売却時に発生する売却益や債務免除益などの対処法に精通していない先生は足を引っ張る存在となってしまいます。債務を圧縮し再生を果たそうとしても、多大な税金を課せられてしまったら意味がなくなってしまいます。このような点を考慮して会計士・税理士の先生に頼むのが賢明でしょう。
--弁護士--
個人の債務相談にアドバイスできるのは弁護士だけで、資格のない人が債務相談を請け負うと非弁行為として罰せられてしまいます。企業倒産の際、管財人になれるのも弁護士。法的整理(破産、民事再生法、会社更生法)を行うときにも弁護士は必須ですし、私的整理(法律を使わず交渉で解決)やM&A,会社分割・営業譲渡などのスキームを使う際も適宜、弁護士に依頼します。
数年前までは事業再生を専門とする弁護士は少なく、債務超過で訪れれば「倒産・・・自己破産ですね」といわれるケースが多いですね。とはいえ、最近では再生を専門にする弁護士も増えてきています。実務のできるターンアラウンドマネージャーを中心に法律面をフォローしてもらうのが最適でしょう。
--司法書士--
不動産や法人の登記をするのが主な仕事ですが、数年前より多重債務者をメインにかまえる事務所も増えてきています。弁護士のように代理人として債権者と折衝することはできませんが、訴訟書類の作成やアドバイスなどもしてもらえます。
法の改正により、簡易裁判所で扱う民事事件に限り、弁護士同様代理人になれる認定司法書士がいます。ある程度自分で債権者と交渉の出来る人は書類作成のときに司法書士の力を借りるのも1つです。
--中小企業診断士--
中小企業の経営状態を調査、分析し経営改善をサポートする経営コンサルタント。国が認定した資格で、歴史も長い。事業再生を専門にしている診断士は少なく、制度の改革や、ISO取得、ベンチャー支援などをコンサルティングしています。再生を頼むのなら資産を計上するときや不動産登記を切り替えるときに力を借りると有効でしょう。
--ターンアラウンドマネージャー--
弁護士が法律を専門とするのなら、ターンアラウンドマネージャーは再生の実務を専門とします。金融機関との交渉、所有不動産の売却やセール&リースバック、会社分割・営業譲渡などの策定、再生ファンドの活用など事業再生のスタートからゴールまで債務者とともに考え再生を進めていきます。
法的整理のスキームを使う場合は弁護士と、税金対策を行うときは会計士、税理士と連携をはかります。いわば再生のためのチームをまとめる監督役になります。
事業再生コンサルタントはこの数年で急増している分、そのレベルにもばらつきがあります。事業全体の問題を見極め、再生の全体図を描けるターンアラウンドマネージャーでなければ意味がありません。再生=債務圧縮だけを考えるターンアラウンドマネージャーには注意が必要です。
<つづく>
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