(5)手放す不動産、維持する不動産を見分ける
金融機関から融資を受ける際に中小企業の経営者は、所有する不動産に必ず担保をつけています。返済が滞ると金融機関はまずそこを狙ってきます。裁判によって不動産を差し押さえ、競売という方法で回収。つまり、不動産資産を持っているうちは金融機関も返済を諦めず、債務圧縮にも応じないわけです。
そうは言っても経営者にとって自宅は心のよりどこりのはず。工場、事務所は事業のベースに不可欠なもの。これらをやみくもに手放してしまったら再生はおぼつかないでしょう。
従来の再生スキームでは自宅は利益を生まないものとして早めに手放し、債務を圧縮、事業を立て直そうという考え方でした。ところがこの方法で再起を図れる経営者は経験上、ほとんどいませんでした。事業再生には家族の絆が大切。家は家族がともに暮らす場所。その場所を失うということは家族の絆を失うようなものです。再生の基盤を築くためにも私は自宅を守ることを優先しています。
自宅を守るためには、いったん善意の第三者に売却、それを賃貸で借りるセール&リースバックがあります。この状態にしておけば再生がすめば買い戻すことも可能になります。思い切って整理することで大胆な再生スキームをとれるケースもあります。
回収を逃れようを不動産の所有権移転してもあとから詐害行為(所有者の権利を阻害する行為)で訴えられる場合もあります。もし、善意の第三者がどうしても見つからなければ債務者主導の再生ファンドを利用する手もあります。再生ファンドを活用し、自宅も事業所も守りながらの再生が可能です。
昔、無借金経営をしていた小さな町工場の経営者が、金融機関から薦められ立派な工場と事業所を建てました。その後に過大な設備投資が経営を圧迫、「あの時、金融機関の誘いに乗らなければ」としきりに後悔していました。問題なのは債務超過でなく経営者の見栄です。事業所と工場を売却し、昔の小さな工場に戻ればいいと思う。周りから見れば衰退した印象にとられるが、事業が継続できるのなら今後、発展する可能性も出てきます。要は身の丈にあった不動産があればいいということです。
<つづく>
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