(10)再生事例1:営業譲渡・会社分割を使うケース
事業再生のスキームの選び方は最終着地点によって異なってきます。今回より再生事例をあげて、再生スキームの選択例を紹介します。
再生事例1:建築業・不動産販売業A社
- 業暦:50年
- 年商:2億円
- 従業員:23人
- 借入金融機関:A銀行、B信用金庫
- 残債:1億円、返済が滞りがちになっている
- 所有不動産:自宅、本社ビル
--デューデリジェンスの結果--
- 自宅、本社ビルが担保になっているので保全が必要
- 破産申立を考え、新規の受注を止めているので当面の運転資金が必要
- 手形の不渡りを出す恐れがある
- 一部社員はすでにリストラ済み、現社員に給与を払うのも厳しい状態
- 建築業は赤字だが、不動産販売業は黒字
- 後継者がいるので事業の継続が大前提
--優先順位と再生スキーム--
<手形に頼る経営からの脱却>
経営立て直しのため、手形に頼らず現金決済に変えていきます。そのためには資金が必要となります。金融機関とリスケジュールの交渉をし、社内に資金を蓄えます。同時にキャッシュフロー表をつくり、お金の流れを把握し、お金を残す経営を考えます。
<不動産の保全>
自宅、本社ビルについた担保の状態(無担保、剰余、無剰余)、抵当権の順番や根抵当であるか調べます。その結果、両物件を残すのか、どちらかを売却し賃貸に移るのか決めます。残す物件は、協力者を見つけセール&リースバック方式で再生した後、数年後にその物件を買い戻します。
<連帯保証人の保全>
社長の父親が連帯保証人になっていたので、金融機関と交渉、社長の妻に変更してもらいます。妻なら資産は社長と同じであり、万が一請求が来てもとられるものはありません。断られた場合は、早い段階で父親の資産を保全する措置が必要となります。(父親所有の不動産を売却するなど)
<事業継続の対策>
会社分割で新会社を設立、長男を社長に据えます。その会社に黒字部門の不動産販売業を移し、営業を続けます。赤字部門の建築業は旧会社に残し、残債を引き継ぎます。
<残債の処理>
不動産を売却した後の残債は無担保債権となります。金融機関がサービサーに債権を償却した後は、サービサーと交渉し出来る限り時価を下回る金額で債務を買い取ります。
営業譲渡・会社分割を使ったスキーム例です。
<つづく>
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