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被災地復興の問題点/住宅ローン二重債務・保証協会重複融資・担保の流失をどうする?

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がれきの撤去はいつかは終わる。住める土地になるかどうか
3月11日の東日本大震災はがれきの撤去から始まり、寸断されたインフラの回復段階を経て、通常に戻るスケジュールを踏んでいます。被災地に住民が戻っても仕事が無ければその土地には住み続けられません。被災地の産業復興が急がれますがこれからの復興スケジュールは現地企業、被災地殖産との兼ね合いで制度上の問題点にあたります。

流された家屋の住宅ローンをどうするか!二重債務問題

住宅を建ててローンを設定しようとしても、既に流された家屋の残債をどうするか。定期的な収入の無い状態で住宅ローンが可能か?など、工場などを有する事業所では設備投資と運転資金の返済途中の企業が被災したら同じものを再度建てられるかなど二重債務の問題が残ります。今回のケースでは流失した土地の担保価値をどのように見るかなど、担保、融資、設備、信用情報、返済原資の確保など金融システム上の障害に当たります。

二重債務問題の解決には行政上の判断が不可欠
これの解決には行政上の判断が不可欠で、これを機会に債権放棄といった思い切った政策も必要でしょう。反対に旧債務の期限の利益を喪失させて元金確定してから、金融機関から債権回収会社(サービサー)に譲渡して①年度更新の手形貸し付けに切り替えて低利にして、自治体単位での利子補給をする。②サービサーに譲渡後3年間は元金返済猶予するなど、特別な措置が必要だとも考えられます。

政府主導復興は現状復帰/今後の地域グランドデザインは自治体に
要は産業復興が命題で地域の雇用確保が大原則にあります。金融債権の回収はある程度の復興した後、正常な経営に戻ってからの課題なのです。私たちが今のまま何らの努力も無いままに単なる復興を政府任せですることは、将来の災害を未然に回避できる可能性を否定してしまいます。ここで太平洋沿岸部で創業する工場や事業所の安全確保をしつつ、沿岸部の有利な地の利を生かして重量物の運搬や搬入を容易にすることが第1と考えるものです。

被災地復興は地域の将来像をデザインするチャンスに
これからの被災地復興は政府や自治体による地域のデザインが不可欠です。阪神淡路大震災では復興後の産業基盤を早い段階からIT時代を見据えて、IT関連企業の誘致を積極的に行った実績があります。このように太平洋沿岸部の地の利を生かした産業は今までどおりでいいのかどうか、工業集積をどのように考えるかなど早い段階で調整が必要でしょう。菅首相の提案で復興支援会議なるものが創設されていますが、やたらと会議を作る会議では斬新な改革案は望めません。農業集積、漁業の復興、食料基地がせいぜいでしょう。

世界的企業の隠れたパーツ供給基地だった東北地区
東北地区では世界企業のパーツ供給地であったことが今回の震災でわかりました。メーカーも2次下請け、3次下請けまでは把握していましたが、4次、5次下請けは把握していなかったようです。海外大手メーカーへのパーツ供給集積がこれからの東北地区の産業集積化の基本的な課題になるでしょう。山間部や傾斜地の多い東北三陸海岸に大規模な工業集積は現実的ではないかもしません。農閑期漁業閑散期に手っ取り早い収入を得るための家内手工業が世界的企業のパーツ供給地域だったとは経済統計でも出てこない隠れた産業集積でしょう。

仙台銀行・七十七銀行公的資金申請へ「国と一体となって地域復興」

宮城県の七十七銀行(仙台市青葉区中央三丁目3番20号、取締役頭取:氏家照彦氏)は4月18日、東日本大震災の被災企業に復興資金を十分に供給するため、金融機能強化法に基づく公的資金の資本注入の検討に入ったと発表しました。公的資金注入の検討入りを表明したのは仙台銀行に続き2行目。氏家頭取は記者会見で「地域に十分な資金供給を図ることが地域金融機関の果たすべき役割だ。国と一体となって地域の復興を果たしたい」と述べています。

被災による二重債務問題解決が先決、更なる特別措置支援を
東北最大の七十七銀行による公的資金注入の動きを受けて、被災地域にあるほかの銀行もこれに続くことが予想されます。ただし、住宅ローンや債務のある被災者や被災企業は災害復旧のための融資を受けることにより二重債務を抱えることも懸念されます。金融による救済には限界があることを念頭に置き、更なる国家的な支援策が求められています。

農水省TPP見据えた東北再生計画:漁港整備、仙台空港、石巻港から農産物を新興国へ
農林水産省では、東北沿岸部の漁業再生に向け、大型11漁港を重点に整備し、水産加工業や保管業、運送業など関連産業を含めた国際競争力のある漁業拠点の検討に入りました。原発事故による水質汚染問題など残るものの、復興に向けた計画は進んでいます。東北近海産の大量の水産加工物が、仙台空港や石巻港からアジアなど新興国へ輸出拡大。被災地域を発展させ、新しい東北の水産、農業、産業の発展に繋げたいものです。
 
縦割り弊害を解決
このように金融や制度の問題、農水省の戦略や、経産省も把握していなかった産業集積など東北の底深さを知らされる災害でした。復興に関する諮問会議が出来るようですが縦割りの弊害はぬぐえません。これを機会に東北地区全体のグランドデザインを話し合って来るTTPや産業集積を計画的に実施していきたいものです。難しい問題山積ですがリーダーシップ発揮のタイミングです。日本書紀に出て来る伊邪那岐、伊邪那美の「国つくり」の意識で望んで欲しいものです。

 [2011.4.21]
 

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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