米国TPP離脱②:アベノミクスの柱に危機。通商政策の戦略練り直し。自由貿易協定調整には慎重
政府も通商政策の戦略練り直し
トランプ次期米大統領が、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱通告を明言したことで、安倍政権の通商政策も戦略の練り直しを迫られています。緊急の日米首脳会談が順調に見えたため、「就任初日に離脱」の通告には、政府も戸惑ったでしょう。アルゼンチンで記者会見した安倍首相も、「予断を持ってコメントするのは差し控えたい」と言葉少なでした。
FTA締結国との貿易額が7割になるように...
安倍政権にとって、TPPは、「アベノミクス再活性化の起爆剤であり柱」でした。平成30(2018)年までに、自由貿易協定(FTA)締結国との貿易額が全体の7割になるよう、締結交渉を進めるつもりで動いていました。TPPの基盤を盤石にし、中国やインドなどが参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などとの貿易交渉も有利に進めよう、という国家戦略です。
トランプ氏は「ゼロ回答」
ところが、TPPに関して、トランプ氏の発言は「ゼロ回答」でした。事前の首脳会談の詳細な中身は伝わっていませんが、安倍首相が、TPPなど多国間の自由貿易の枠組みの意義を伝え、「同盟は信頼がなければ機能しない。信頼できる指導者だと確信した」のであれば、どうもチグハグです。
農畜産品の関税率さらに引き下げも?
政府は今のところ、TPPの旗を降ろしておらず、次善策ともいえる自由貿易協定の調整には慎重です。TPPで日米が既に合意している、農畜産品などの関税率をさらに引き下げられる可能性があるためです。知的財産権の保護や電子商取引のルールなどは、二国間だけで取り決めてもグローバル化にはつながりません。最善の打開策を期待したいと思います。
[2016.12.5]
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