和牛の卸値が高騰で、高値安定の気配も。「TPP発効」と「国内農業保護」の齟齬を政府はどう考えている?
A5の和牛肉の高騰率は史上初を記録
和牛の卸値が高くなり、高値安定となりそうな気配です。政府が昨年11月にまとめた環太平洋経済連携協定(TPP)の対策案が、相場を押し上げるとの見方も広がっています。さらに卸値が上がれば、消費者の和牛離れは必至とみられ、生産者には厳しい冬が訪れています。
霜降りで有名なA5の和牛肉(去勢したオス)は、12月、東京市場の取引価格が1キロ3161円と、1年で23%も上昇しました。「高騰率は史上初」と言われます。高級料亭が好むメスの和牛肉は、なんと3523円。「安さ」が売りのオーストラリア産牛肉と和牛を比べると、スーパーなどでの小売価格では、3倍もの差が生まれています。売れ行きが鈍ったため、牛の畜頭数は1日の目安の6000頭を大きく下回り、4000頭に満たない日もあります。
マルキンで悪循環が生まれる可能性も
改善が進まない背景に、「マルキン」と呼ばれる制度があります。肥育農家が赤字になった場合、政府がその分を補填する制度です。国と農家が3:1で積立金を出し、購入した子牛を成牛に育てるまでの費用がコスト割れすると、積立金を取り崩し、補填の緊急措置とするのです。政府は今後、この制度を拡充します。しかし、赤字補填を税金に頼るこの構図が定着すれば、和牛の値上げを食い止めようとする圧力が衰え、結果的に悪循環が生まれます。
子牛が成牛に育つまでには、約20カ月。現状では、今後の子牛の価格高騰も確実で、手を打たないと、和牛の値上がりはとまりません。そこに、TPPの発効で関税が引き下げられた米国産やオーストラリア産牛肉が参入してくる。国内農業の「保護」の意味を、国は取り違えていないでしょうか。
[2016.1.16]
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 和牛の卸値が高騰で、高値安定の気配も。「TPP発効」と「国内農業保護」の齟齬を政府はどう考えている?
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.h-yagi.jp/mt5/mt-tb.cgi/2399
コメントする