TPP交渉の閣僚会議、大筋合意に至らずに閉幕。自国の利益だけを追求し、会議にほころびを作った国に「フェア」の感覚はあるか。
参加12ヵ国が妥協間近を確信
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合が7月末、大筋合意に至らずに閉幕しました。関税引き下げや投資ルールの分野で議論が進む一方、新薬開発のデータ保護期間を巡る交渉が難航しました。参加12ヵ国は、共同声明で「TPPが妥結間近であることを確信している」と強調し、日本政府も「課題は相当、絞り込まれた」(菅義偉官房長官)と依然、早期妥結の構えです。
TPPは、アジア太平洋地域(環太平洋地域)に、巨大な自由貿易圏を作る壮大な構想です。民主党政権下の2010年、菅直人首相が参加を検討すると表明。自動車や機械など日本の主要産業の競争力強化を目指す経済団体は参加を支持し、関税撤廃による農林水産業への影響を懸念する農協や漁協など生産者は反対する、というのが大まかな構図です。
自国の利益を求めた奇策が裏目に
妥結するかに見えた今回の会合で、誤算は、"伏兵"ニュージーランドの存在でした。全体の大きな懸案だった、新薬開発のデータ保護期間について、創薬力に優れ、世界市場を席巻する米国は「12年」の長期を、保護期間を短くして後発医薬品を早く使いたいニュージーランドは「5年以下」の短期を主張しました。日本は、その中間の「8年」を提案しました。ここでニュージーランドは、譲歩を条件に、日米やカナダに対して、乳製品輸入枠の大幅な拡大を強硬に迫ったのです。自国の利益のため、大筋合意のタイミングを見ての奇策だったのでしょうが、裏目に出ました。この小さなほころびが、全体を崩してしまったのです。
諸国が集まった会合は、熾烈な駆け引きの場です。しかし、今回のニュージーランドの振る舞いは承伏できません。こうした身勝手さは、犠牲を払いつつも状況を進めようとする日本国民の思いを、踏みにじるものだと思えるからです。大事な場面だからこそ、「フェア」という感覚が必要であり、それが相手の信頼を得る最大の武器ともなるのです。
[2015.8.18]
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