英国科学誌、ネイチャー:STAP細胞再現できずと発表。捏造事件で何を喚起させたか。
ネイチャー誌も「STAP細胞、再現できず」を発表
日本を代表する研究機関・理化学研究所が発表した「STAP細胞」について、133回の実験でも再現できなかったことを、英国の科学誌ネイチャーが発表しました。STAP論文が掲載された、最も権威がある科学学術誌です。昨年12月、理研の外部調査委員会も、同様の結論を出していました。この世紀の捏造事件で私が実感したのは、「ガバナンス(組織統治)」の重要性です。
ネイチャーは、小保方晴子・元理研研究員の研究室に残っていた試料の遺伝子を解析しました。結論は理研と同じで、STAP細胞は、すでに世界中で使用されているES細胞(胚性幹細胞)由来の細胞でした。論文は昨年7月、撤回されています。優秀な研究者を死に追いやり、再生医療の可能性に希望を託す難病患者らを傷つけたこの事件は、本当に罪深い。
責任の所在があまりに不透明な対応
しかし、科学的結論こそ出たものの、この問題を引き起こした背景が十分に検証されたとは、私には思えません。理研は昨年3月、最初の調査を終えると、著者に論文撤回を勧告しただけで、「追加調査は行わない」と表明しました。外部委員を含む経営戦略会議を新設し、倫理教育や不正防止策など、ガバナンス強化に向けて動き出すのは、世界の批判を浴び、混乱が拡大した後のことです。ノーベル賞受賞者でもある野依良治理事長が、検証のリーダーシップをとる姿は最後まで見られませんでした。責任の所在があまりにも不透明です。
「研究が虚構というのが大事な結論。大きな意味で真相は解明できた」。今年3月の野依理事長の退任会見での発言です。唖然としました。真相を徹底解明する方針を早い段階で示せていれば、理研の信用がここまで失墜することもなかったのです。理事長自身、自分の組織運営に違和感を持たなかったのでしょうか。どの業界でも同じですが、一度、失った信用を回復するのは至難です。普段からのガバナンスの重要さを、みなさん、理研の失敗から学びましょう。
[2015.10.13]
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