緊急保証制度:2.131億円の貸倒れ!多いか少ないか、
代位弁済が毎月200億円
リーマンショック後の平成20年10月31日にスタートした「緊急保証制度(平成22年2月15日から景気対応緊急保証制度に制度名を変更)」は、中小企業の資金繰り支援、原料高への対応支援を目的に信用保証協会(国)が融資の100%保証する融資制度です。
20ケ月間で約20兆7,000億円の融資
中小企業庁の公表資料によると、20年の制度開始から平成22年6月までの20ケ月間で約20兆7,000億円の融資総額となりましたが、この総額に対する代位弁済(借入れた企業に変わって信用保証協会が債務を肩代わりすること)額が2,131億円であることがわかりました。つまり融資総額の1.03%が中小企業破綻などによって貸し倒れになったということになります。代位弁済は平成22年に入ってから毎月200億円ペースで膨れ上がっており、中小企業庁では平成10年10月1日にスタートした「特別保証制度」の同期間比1.19%に近づいていると見ています。
貸し倒れのツケが国民に
金融機関の貸し渋り対策として施行された「特別保証制度」導入時、融資の審査は税金滞納、債務超過がなければ原則融資可能で比較的ゆるい審査といわれ、多額の貸倒れを招く結果となりました。「緊急保証制度」はその反省から、信用保証協会は企業存続性などを審査に追加しました。にもかかわらず貸倒れのペースか変わっていないようです。平成10年頃よりも10年後の平成20年頃がいかに企業の資金繰りが悪化しているかわかります。
円高で代位弁済増
今後も円高、株安傾向が続けばさらに企業の資金繰りが厳しくなり、代位弁済が増えると予測できます。「特別保証」での多額の貸倒れのツケが国民への負担となった10年前と同じことが繰り返されようとしているのです。中小企業庁では、最終的に代位弁済率は10~11%に達する可能性があるとみています。
経済効果はある「緊急保証制度」
帝国データバンクによると平成21年5月末時点(7ケ月間)での「緊急保証制度」の利用は、累計53万4,000件、融資総額10兆8,000億でした。同社による1万781社に対してのアンケートでは、「効果は大きい」「効果はある」「効果あり」と答えた企業が9,954社、構成比92.3%にも及びました。「緊急保証制度」に対する効果は多くの企業がこの制度を認めているのです。
貸倒れ2,131億円は多い?少ない?
この制度によって貸倒れとなった2,131億円は多いと見るのか少ないと見るのかなのです。この制度を利用したことによって中小企業の連鎖倒産抑制、リストラ回避など雇用確保と経済効果があったのではないでしょうか。
効果のあるなしを論じること、貸倒ればかりが問題になります。反対に倒産が回避できたケースはデータに出てこないことを認識しなければ冷静な判断は出来ません。
私たちはこの制度は日本の中小企業には必要なシステムだと判断しています。金融機関が公器であり企業を救済してくれる時代ではないのです。少なくても制度上での100%保証をする「緊急保証」のシステムを今後の残して欲しいものです。
265万人の雇用を維持!
「緊急保証制度」の利用後の中小企業の倒産件数を見ると平成21年5月までの7ケ月間で21件。10年前の「特別保証」の同期間の341件を大きく下回っています(帝国データバンク調べ)。制度を利用した企業が53万社として倒産がわずか21件で、1社5名と計算すれば265万人の雇用を維持できたことになるのです。この経済効果を見れば貸倒れ額が多いのか少ないのか判断できるのではないでしょうか。
2年後には元本返済
しかし、「緊急特別保証制度」を利用して資金繰りの改善が出来たものの、収益向上への改善がなされなければ問題の先送りだけです。最長2年の元本返済猶予も、2年後を迎えれば約定弁済が再開されるのです。
今後も中小企業を取り巻く状況は厳しく、緩和措置や優遇制度が求められます。民主党代表選の9月14日以後に誕生する新しい国のリーダーには大掛かりな経済対策に期待したいものです。
[2010.8.25]
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