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新日鉄・住金のM&A公取委が障害?:産活法改正で国際競争力強化/シェア奪還

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産活法改正でTOBに株主総会が不要に
政府は2月10日、企業のグローバルな競争力強化にM&A(企業の合併・買収)を支援するため、産業活力再生法(産活法)改正案を閣議決定しました。産活法とは、平成11年に、事業の再構築を促す目的で施行された法律で、企業の合弁、買収の際、一定条件を満たし認定されると税制上の優遇措置や手続きの簡素化、公的金融機関からの低利融資などの支援が受けることができます。
改正案は、公正取引委員会(公取委)の審査の迅速化や、TOB(Take-Over Bid:株式の公開買い付け)で企業を100%子会社化する場合に、株主の90%以上がTOBに応じれば、残りの株式を自動取得できる仕組みを取り入れると言います。

合併再編など閉鎖費用:政策金融公庫低利融資
企業は株主総会の事務を省くことで約3ケ月、時間を短縮できると言います。また、合弁による再編や工場などの閉鎖に必要な資金は、日本政策金融公庫などから低金利で融資する仕組みを新設、平成23年度に1,000億円を確保したとあります。合弁審査では、企業のおかれた業界に詳しい所管省庁が調整役として公取委との協議を義務づけ、独占禁止法(独禁法)に基づいて合弁の審査のスピードを促進すると言います。

公取委が認めるか、合弁で国内シェア7割以上に!新日鉄・住金
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新日本製鉄と住友金属工業は2月3日、経営統合で合意し翌4日、両社社長は公取委へ出向き平成24年10月をめどに合併する方針を伝えたと報道がありました。両社の合弁審査では、製品によって国内市場占有率が極めて高くなるため、慎重な審査になると予想されます。製造業の国際競争力の強化に向け、経済産業省では両社の合弁を後押し。公取委の審査に政府の意向を反映させるように産活法改正案を今国会に提出する方針を決めたと報じています。

公取委が世界戦略に影響!国内重視偏重、海外戦略
公取委は、合弁審査において国内シェアの高さを重視してきましたが、平成19年、市場のグローバル化進展を踏まえ合併審査の指針を改正。国内外のどの企業からも調達できる製品については、国内シェアが高くても世界シェアが低ければ統合を認める傾向になりました。両社の合併が承認されれば製品別の国内シェアでは、河川の護岸工事などに使用する「鋼矢板(シートパイル)」は71%に、原油の採掘などに使う「シームレスパイプ」は69%にもなります。事実上の政府の圧力に、公取委の判断が今後の日本の産業に大きく影響しそうです。

新日鉄・住金:世界市場2位へ浮上/パナソニック・三洋電気:シェア100%近くに
公取委は、平成21年、パナソニックの三洋電機買収で、環境保護に貢献する充電池などシェアが100%近くになる製品があることから「競争を制限する恐れがある」と指摘。三洋電機の工場の一部を、中国の電池メーカーに売却し承認を得ました。一企業の独占を美末、公取委の公正な判断がうかがえます。鉄鋼業界関係者からは「合併承認にあたり、公取委は厳しい条件を突きつける」と報じています。海江田経済産業相は2月4日の会見で、「国の方向性を理解していただき、判断してもらいたい」と公取委をけん制。合弁審査に関して、業界を所管する閣僚が公取委に対して意見できる仕組みを盛り込むようです。
鉄鋼業はほんの10数年前までは世界市場を日本がリードしてきましたが、インドで創業した「アルセロール・ミタル」が大型買収を繰り返し世界最大手となりました。平成21年、世界の粗鋼生産量は、前年2位だった新日本製鉄は6位に、住友金属工業は19位から23位に後退したのです。両社によると合算すれば平成21年は世界4位となりますが、平成22年で合算すると2位に浮上すると試算しています。

国内の法令が海外展開拡大の阻害に
日本の産業は、今でこそ自動車や電機、半導体など上げられますが、産業界では依然「鉄は国家なり」と讃えられました。合併によって規模を拡大した企業は、成長を続ける新興国などとのパートナー関係に国際競争力の強化は欠かせません。規模拡大で生産量を上げ、コストを抑え、鉄鉱石や石炭などの原料調達にも交渉で優位に立つことができます。
日本自動車工業会の滋賀会長(日産自動車最高執行責任者)は、2月8日、両社の合弁審査に関して「グローバル競争の中、日本の産業が国内の法律によって競争力が出し切れないことが起こらないような対応がふさわしい」とコメント。「自動車メーカーにとっては、鉄鋼製品の海外調達が容易になる」と両社の合併を歓迎しています。世界で事業を拡大していけば他の産業へも波及効果が生まれます。公取委には、空洞化が加速する国内市場や世界市場を見据えて公正な判断を下してもらいたいものです。幅の広い鉄鋼産業のグローバル化で国内の関連産業にも波及効果を期待したいところです。

[2011.2.15]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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