なぜロシアはウクライナに侵攻したのか、その背景は?
国際社会はロシアの軍事侵攻にNOを突きつけた
2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻に際し、わずか数日のうちに、国際社会はその正当性を完全に否定しました。
岸田総理大臣は「ウクライナの主権及び領土の一体性を侵害するものであり、国際法違反であり、認めることはできない」と非常に早い段階で述べ、G7(先進国首脳会議)と協調した経済制裁を発表しました。
林外務大臣もガルージン駐日ロシア大使を召致し「明らかに国際法違反だ」と申し入れました。
ガルージン大使は「ロシアの安全への脅威からの自衛であり、自衛権を認める国連憲章51条に基づく」と主張しましたが、国連のグテーレス事務総長も「51条に沿った決定とは矛盾するものであり、明確に国連憲章違反である」と断言しました。
責任を問われるアメリカの弱腰
力による一方的な現状変更は断じて認められず、今回の侵攻を強く非難する。ロシア側は、直ちにウクライナへの侵攻をやめ、ロシア国内に撤収するべきである――これが国際社会のおおよそ一致した意見ですが、利害が相反する組織や集団が複雑に絡み合っていますから、当然、それぞれの立場から異なる見方が出てきます。
アメリカでは、共和党がバイデン政権への批判を強めています。2021年8月、アメリカはアフガニスタンに駐留していた米軍部隊を完全撤退させましたが、結局、現地のアフガニスタンでは武装勢力タリバンが権力を掌握し、国内の混乱は続いています。
そして今回、ロシアの軍事侵攻という危機において、バイデン大統領がウクライナへの兵器供与をしてこなかったこと、当初からロシアの軍事力行使に対して軍事手段はとらないと言明しました。
このように、バイデン政権があくまで軍事対決を避けるという弱腰のスタンスをとったことが、結果的にロシアのウクライナ侵略を促したというのです。
NATOの東方拡大がロシアに脅威を与えた
1999年のポーランド、ハンガリー、チェコの加盟に続き、2004年のスロバキア、ルーマニアの加盟によって、ウクライナより西側の国境はすべてNATO(北大西洋条約機構)の加盟国と接することになりました。
プーチン大統領は2000年に初当選して以来、ロシアを仮想敵国とする西側の軍事条約機構NATOの東方拡大を目の当たりにしてきたわけですから、これを安全保障上の脅威とみて警戒心を強めてきました。
西側志向のウクライナとロシアとの関係
ウクライナは、国内ではNATO加盟を支持する声が強いものの、NATOにしてみれば、ウクライナ東部地区の紛争をNATO内部に取り込んでしまう懸念やウクライナを「兄弟国」とみなすロシアを過剰に刺激する恐れがあるかぎり、ウクライナの加盟実現はありえません。
しかし近年、ウクライナ政権は貧困や政治腐敗、治安の悪さなどの不平不満から国民の目を逸らせるために(もちろんそのためだけではありませんが)、NATO加盟支持も含めた反ロシア政策を採っており、このことがロシアとの関係をさらに悪化させるという悪循環に陥っています。
ソ連解体時には「文明的な離婚」と呼ばれたロシアとウクライナの関係は、もはや一筋縄では解決できないほどこじれてしまっているのです。
次回は、天然ガスの巨大市場ヨーロッパをめぐる攻防、情報戦とフェイクニュースなどについてお話しできればと思います。
●関連記事:「ロシアがウクライナに軍事侵攻!新たな「冷戦」の始まりか」[2022.3.1配信」
●関連記事:「ウクライナ軍事侵攻の教訓、エネルギー安全保障と情報リテラシー」[2022.3.8配信]
[2022.3.6]
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