日銀・金融政策決定会合「資金繰り支援策を延長」発表、中小企業は救えるのか?
中小企業の資金繰り支援策は9月末まで延長
日銀の黒田東彦総裁は、2022年1月17日、金融政策決定会合の決定内容を発表しました。
大企業向けや住宅ローンなど民間債務の担保を通じた支援は、期限通り22年3月末で終了するとした一方で、コロナ対応の中小企業向け特別オペは22年9月末まで半年間延長することになりました。これで4回目の延長です。
倒産、休廃業の件数は減ったが、その実態は決断の先延ばし
2021年の企業倒産は6,030件で57年ぶりの低水準、休廃業・解散企業は4万4,377件で、過去最多だった2020年より10.7%減少しました(東京商工リサーチ調査)。
しかし、倒産や休廃業が数字の上では減ってはいますが、実情は給付金などのコロナ関連支援や実質無利子・無担保融資などの資金繰り支援によって延命し、事業継続の判断を先送りした企業が増えていると見られています。
実際、中小企業の事業環境は悪化し、負債は膨らみ続けています。東京商工リサーチは、通常、年商の6~7割程度だった負債が、年商と同規模になっているケースが増加していると分析しています。特に飲食や宿泊などの接客業は、依然として資金繰りが非常に厳しい状態です。
問題は「第6波」収束後の運転資金
オミクロン変異株の感染が急激に拡がり、現在、「第6波」の渦中にあります。政府もこれを受け、すでに東京都などで適用されている、まん延防止等重点措置の範囲を34都道府県まで広げる方針を固めました。
問題は、第6波が収束したあとです。収束後、再び経済活動が活発化して売上が伸びたとしても、いま過剰債務を背負っていると追加の運転資金を借り入れるのが難しいため、黒字倒産に至る企業が増えることも十分に考えられます。
熊本県では新たな形の支援がスタート
事業の継続を行政などの資金繰り支援に頼らざるをえない中小企業にとって、コロナ禍が去ったあとまで見据えた経営計画の評価や見直しが喫緊の課題となります。とはいえ個人商店や零細企業には容易なことではないでしょう。
こうしたなか、熊本県の中小企業経営支援連絡会議は、新たな形の支援ネットワークを発足させました。これは「経営状況が悪化する前に」改善に向けた取り組みを支援するもので、全国的にも例がなく先進的な試みだとのことです。
まずは経営計画の見直しにいち早く取り掛かること、これが短期的にも長期的にも業績の回復に繋がります。資金繰りのみならず経営計画の評価や見直しに関して行政や専門家の力を借りるのも有効な一手だと思います。
コロナ対策資金の返済猶予期間の延長を
一昨年、安倍政権下で資金繰りが悪化した企業への金融支援策が実施され、保証協会や政府系金融機関がこぞって融資に応じてきました。その返済猶予期間がそろそろ満了します。いままさに必要な支援を行なうために、支払い延期や猶予を法案化してもらいたいものです。
●関連記事:「新型ウィルス感染拡大へ緊急対策第2弾!中小企業の資金繰り支援を拡充」[2020.3.17配信]
[2022.1.26]
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