事業再生を目指す中小企業への朗報となるか?「私的整理」の要件緩和へ
新ガイドラインの柱は「私的整理」手続きの要件緩和
全国銀行協会(全銀協)がまとめる中小企業の事業再生ガイドラインの指針案が明らかになりました。全銀協は今月中にもガイドラインを策定し、4月から指針に基づいた手続きができるよう加盟する金融機関に求めていく方針です。
ガイドラインの柱となるのが「私的整理」手続きの要件緩和です。
企業の事業再生には、裁判所の管轄下で手続きを進める「法的整理」と、企業と金融機関など当事者同士が話し合いで再建を目指す「私的整理」があります。私的整理は、信用低下のリスクが少なく、より自由度の高い再建方法を選ぶことができます。私的整理から法的整理に移行した場合も、事前調整が堅実に行われていれば再建のスピードアップも望めるというメリットもあります。
債務超過の解消期限が「5年以内」に延長
指針案によると、私的整理による再建を行う中小企業には、
・債務超過の解消の期限を3年以内から5年以内に延長する
・経営者の退任を必ずしも求めず、報酬の減額を求めることも認める
など、既存の要件が緩和されます。
同時に、弁護士や公認会計士などの第三者支援専門家が入って金融機関との関係を調整し、経営状況の透明化や再建計画の健全化を図ります。
中小企業向けガイドラインを利用して事業再生を最適化
すでに大企業・中堅企業を想定した「私的整理に関するガイドライン」は2001年から活用されていますが、中小企業にとっては使い勝手がよいものではありませんでした。先行きの不透明なコロナ禍で中小企業の債務が増加するなか、中小企業のためのガイドラインが初めてつくられることになったのです。
先月の東京商工リサーチの調査で「過剰債務」と答えた中小企業は32.2%(5,679社中1,832社)にものぼります。今年はコロナ関連の融資の返済が本格的に始まり、事業再編や再構築が進んでいない企業が資金繰りに行き詰まるケースが増えると見込まれています。
今月13日時点で新型コロナ関連の破綻は累計2,736件、先月は過去最多の174件を記録しました。特に従業員数が少ない小規模事業者に集中しています。
新たなガイドラインによって、中小企業がスムーズに私的整理を行える環境が整うことが期待されます。
●関連記事:「金融庁:私的整理のルール緩和!再生計画案、債権者の同意「全員一致」から「多数決」へ」[2014.6.20配信]
[2022.1.18]
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