上場企業の自社株買い、前年同期比で半減!セイコーエプソン、積水ハウス、東急電鉄
前年同期比、ほぼ半減
近年、流行していた上場企業の「自社株買い」に、急にブレーキがかかってきました。1~6月の自社株買いの総額は、前年同期に比べ、ほぼ半減です。平成27(2015)年の企業統治改革をきっかけに、株主還元の一環として普及しましたが、M&A(合併・買収)や設備投資などの事業への投資を優先させるようになりました。資金を新たな成長投資に振り向けるのですから、株主も納得するでしょう。
「金庫株」は必要な事業の資金に
「自社株買い」は、文字通り、上場企業が発行した株を、自分で買い戻すこと。市場に流通する株数が減少するため、1株当たりの価値があがり、株価が上がります。企業統治改革で、使途の制限なく自社株の取得・保有が可能になったことを受け、この上昇分が株主への利益還元に充てられてきました。自社株は「金庫株」とも呼ばれましたが、今回の動きは、この金庫株を必要な事業の資金に充てるというものです。
「先行投資優先」セイコーエプソン
昨年5月、4年半ぶりの自社株買いを実施したセイコーエプソン(セイコーエプソン㈱:長野県諏訪市 碓井稔社長)。今年度に入り、碓井稔社長が「当面は自社株買いより先行投資を優先する」と方針転換を宣言しました。国内プリンター市場の縮小が続く中、新製品開発に向けた研究開発や、新規事業の開拓を狙ったM&Aなどへの成長投資がより重要との判断です。
海外事業、駅周辺の大規模開発へ
積水ハウス(積水ハウス㈱:大阪府大阪市 阿部俊則社長)も、同様です。自社株買いは見送って、資金を米国や中国など海外事業の投資に回しています。平成26(2014)~平成28(2016)年度に300億円の自社株買いを実施した東京急行電鉄(東京急行電鉄㈱:東京都渋谷区 野本弘文社長)も、資金は今後、平成31(2021)年3月期までに1000億円を投じる渋谷駅周辺の大規模再開発に振り向けます。
本業強化はまっとうな経営判断
自社株買いが減少すると、日本企業の株主還元の強化を評価して日本株を買ってきた外国人投資家が、日本株市場から離れてしまうリスクが出てきます。しかし、本業の強化は真っ当な経営判断。こちらを支持するしかありません。
●関連記事:「株式報酬型ストックオプション」導入の企業が増加。右肩上がりの成長を見込めない現代において、経営陣の意欲を最後まで高めるための制度として評価!」[2015.10.2配信]
[2017.8.12]
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