東京五輪:農産物アピールのチャンス
日本の農産物のおいしさをアピールするチャンスだが?
平成32(2020)年東京五輪・パラリンピックは、日本の農産物のおいしさや安全性を世界にアピールする大チャンスです。ところが、選手村などで、国産農産物が十分に提供できない可能性が出てきました。大会組織委員会が定めた国際的安全基準のクリアに加え、高い審査料や厳格な生産管理が農家を及び腰にさせています。国や自治体は、農家を後押しする対策に乗り出しました。
ネックは「GAP」の取得
ネックになっているのが、「GAP」の取得です。GAPは農産物の安全認証で「よい農業の方法(Good Agricultural Practice)」の略。農薬使用量や栽培に使う水の質など、様々な項目に合格した農家が取得できます。認証団体は複数ありますが、欧州で普及する「グローバルGAP」やカナダの「カナダGAP」が有名です。日本では平成18(2006)年に設立された日本GAP協会(東京)が「JGAP」を創設。自民党と農林水産省は今年5月、平成31(2019)年度末までに、GAP取得件数を現在の3倍以上に増やす方針です。
現状の取得は全国約1%で4500農家のみ
しかし、認証取得ばかりか、認証を維持するにも、毎年30万円以上の更新費が発生する場合があります。作業のたびに生産の管理記録を詳しくつけることも、農家にとっては難題。畜産農家には安全性だけでなく、動物愛護の観点から肥育環境の整備を求められるケースも考えられます。結果、現在までにGAPを取得したのは全国の約1%、約4500農家にとどまり、五輪での100%提供が危ぶまれているのです。
五輪以降の未来設計図を
福島県は今年5月、平成32(2020)年度までに認証取得数の日本一を目指す「GAPチャレンジ宣言」を発表しました。農家に指導できる人材を育てて、県内の作付面積の51%以上で認証を得る目標を掲げています。岐阜県も、特産品の飛騨牛のほか、トマトなど11品目を重点食材として取得を呼びかけています。大阪府羽曳野市も、農協と連携し、デラウェアなど地元名産の食材でGAPを取得できるよう指導を始めました。農家の心をつかむには、五輪だけで終わらない、未来の設計図をきちんと描いてみせることでしょう。
●関連記事:「米国農産物輸出最高:安全高品質/日本認証農産物(GAP)の輸出躍進で雇用拡大か」[2011.2.25配信]
[2017.6.20]
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