貸金業法改正10年:貸金業者数1/6、貸付残高1/4激減、カジノ賭博場の合法化新たな多重債務者出現か!
金利の引下げ、年収に応じた総量規制強化が激減の要因
消費者金融など貸金業者に対し規制を強化した改正貸金業法の成立から平成28年12月13日で10年を迎えました。法の改正により貸付金利の上限の引下げや、年収に対応した総量規制が強化された結果、無担保の消費者向けの貸付残高は、平成27年度末時点で4兆4,438億円と10年前に比べ約4分の1に激減しました。
この間、中小・零細貸金業者の淘汰、再編が進み貸金業大手はメガバンクの傘下になるなど貸金業界の様相は一変しました。貸金業者数も、平成27年度末には1,926社まで減少。10年前の約6分の1まで縮小しました。
大手「武富士」会社更生法の適用/96.7%カット
貸金業者大手の武富士は、平成22年に会社更生法の適用を申請しました。負債総額は、4,336億円。武富士倒産の最大の要因は、過払い金の請求でしたが、武富士利用者の過払い金返済額は96.7%カットされ、更正債権届出書を提出していない武富士利用者には過払い金が打ち止めとなりました。
一方の大手、「アコム」は三菱UFJフィナンシャルグループ、「プロミス」は三井住友フィナンシャルグループ、「レイク」は新生銀行の傘下となりました。かつての「高金利」「過剰融資」「過酷な取り立て」であった貸金業者は大手金融機関の傘下で現在も過払い金請求に対応しています。
過払い金返還額:10年で6兆円
過払い金返還額の請求は、現在も続いており平成27年には約2,500億円。過去10年間の累計では6兆円を超えます。日本貸金業協会長は、「返還請求はまだしばらく続く」と貸金業界の冬の時代はなお続く見込みを予測しています。
改正貸金業法の規制強化の施行で平成18年度末に171万人に達した多重債務者は、平成28年10月末時点で9万人に激減しました。「顧客を無視した利益至上主義が多重債務問題の原因になった」と、同協会長は振り返り、貸金業界の健全化に一層取り組む意志を示しています。
銀行系消費者ローン、貸金業者を上回る
多重債務者の撲滅や救済を目的に貸金業法が改正、施行され、貸付残高は激減した一方、銀行による消費者ローンの貸付残高が平成28年3月末時点で貸金業者の残高を上回りました。
規制強化により貸付残高が伸びない貸金業者を尻目に、日銀のマイナス金利政策でも一定の利ざやが確保できると銀行が攻勢をかけています。駅構内や電車内の広告、新聞、テレビコマーシャルの露出をみればその姿勢が理解できます。
カジノ賭博場の合法化の背景
平成28年12月11日には、改正貸金業法10周年の関係者が集まり会が催され、ある弁護士は、貸金業法改正の規制にあてはまらない銀行の消費者ローン、カードローンの過剰な貸付やカジノ賭博場の合法化により、新たな多重債務者を生み出すと懸念を呼びかけました。
過払い金返還請求は正義か?
本当に貸金業者を悪とした政策が、私たちを幸せにしたのでしょうか?ライフリンクの統計によると、確かに経済自殺者は減った傾向にありますが、10年で10%にも満たない減少です。反対に水商売や売春に身を落とす方々や育児放棄は社会問題になっていることは、合法的金利の制限にとどまらず貸金業を締め付けた結果ではないのでしょうか。
社会は常にバランスによって成り立っています。今こそ何が正しいか小口金融の存在意義を見直すタイミングに立っているのかもしれません。
[2016.12.16]
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