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製薬業新薬開発費調達:特許切れ薬を売却/塩野義、アステラス/ジェネリック5割普及

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特許切れ薬、海外企業に売却へkusuri.jpg
アベノミクスの1つである医療イノべーション。その柱となるはずの「創薬」分野で、国の政策と製薬企業の思惑が一致しません。ポイントは、「特許切れ薬」!

塩野義製薬(塩野義製薬(株):大阪市中央区 手代木功社長)は感染症薬、アステラス製薬(アステラス製薬(株):東京都中央区 畑中好彦社長)は消化器病薬などを、海外企業へ売却する動きに出ています。

特許期間中に開発費は回収可能、あとは粗利9割!
簡単に説明しましょう。製薬会社は独自に医療用医薬品を開発し、特許を得ます。薬の開発コストや重要性によって期間はさまざまですが、特許期間が終了した後は、他社も、同じ有効成分を使った「後発薬:ジェネリック」※を発売することができます。

一見、開発元が不利に見えますが、市場で先行していれば臨床データも豊富で、優位性は簡単には揺るぎません。特許期間中に、開発費は回収が済むとされており、あとは粗利益率が8~9割に達する事業なのです。

価格大幅ダウンの後発品普及で資金が枯渇
しかし、医療費の抑制を進める政府は、価格が大幅に下がるジェネリックの普及を進め、現在約5割まで伸ばしています。この政策が、特許切れ薬は収益を支える屋台骨としてきた製薬企業には打撃になります。後発品が普及するほど、新薬の開発に充てる資金が枯渇する構造に陥るためです。

asterashata.jpgのサムネール画像1000億円を超える投資で成功率3万分の1/新薬開発費
天然由来の物質から薬ができた時代は、はるか昔。化合物の合成もやりつくした感があり、欧米では、遺伝子情報をベースにしたゲノム創薬が主流になりつつあります。画期的な新薬の開発には1000億~2000億円の開発費が必要、成功率は3万分の1とされる厳しさもあります。

製薬業界もイノベーションの時
いずれにせよ、利益率の高い特許切れ薬で稼ぎ、その収益を新薬の開発投資に充てるというビジネスモデルは、もう通用しなくなるでしょう。今回の2社の動きは、開発資金を得るための苦肉の策。今後、製薬業界の大きな流れになるかもしれません。

[2016.07.22]

※ジェネリック医薬品:
特許切れの医薬品を、開発元ではない他社が製造したもの。有効性や安全性が実証されてきた新薬と同等と認められ、低価格な医薬品を指す。国の医療費削減効果が期待されている。

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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