アマゾンが試験的に本の値引き販売を開始。出版市場に刺激を与える起爆剤になるか。
低価格路線で本離れに歯止めはかかるか
本離れが叫ばれ、読書文化がなくなるとの懸念さえあります。そうした中、ネット通販大手「アマゾン」が、刊行後、一定期間を過ぎた一部の本の値引き販売を試験的に始めました。書店にとっては打撃です。出版界の慣行を打ち破る新たな試みが、文化をどう揺さぶるか注目ですね。
日本には再販売価格維持制度があり、本も定価販売が一般的です。ただし、出版社から「要望」があった本の値引き販売は、制度の対象外。アマゾンはこの点に着目し、購入者本位の「低価格路線」の実現を目指しました。けれども、それに乗る出版社は極めて少なく、現在、参加するのは筑摩書房のみ。当面、「フローベール全集」などで定価の2割を値引きしますが、同書房はすでに約100の書店で同じ試みをしており、たまたま思惑が一致した形です。
再販制度の弊害はあるが
アマゾンジャパンの村井良二バイスプレジデント(書籍事業本部担当)は、値引きの狙いについて、「硬直している出版業界に刺激を与え、業界全体を底上げできないかと思った」と意気込みます。再販制度によって市場の競争原理が働かず、システム的に疲弊していることへの危機感を強調します。確かに、出版市場は1996年の2兆6500億円をピークに縮み続け、2014年は1兆6000億円。出版業界が活気を取り戻すには、流通革命も必要でしょう。
一方で、書店と出版文化を守るため、値引きした本の無料配送を禁止する「反アマゾン法」と呼ばれる法律をつくった、フランスのような国もあります。いわゆる「正解」はありません。こういう時代だからこそ、出版文化とは何かという理念から、大いに議論してほしいものです。
[2016.1.4]
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