公的年金の世代間格差はますます拡大。広がっても価値は本当に変わらないのか?
70歳は5.2倍、30歳は2.3倍!
公的年金の「世代間格差」がさらに拡大するようです。厚生労働省が、支払った保険料に対し、いくらの年金を受け取れるのかの倍率について、最新の試算を発表しました。驚くなかれ。会社員が入る厚生年金では、70歳の世帯は保険料の5.2倍を受け取ることができます。ところが、30歳以下の世帯は2.3倍。経済が低成長の場合、格差はさらに広がります。
厚労省が示した例で見ると、「標準的」な経済成長を前提とした場合、70歳(1945年生まれ)の世帯では、保険料として1000万円を支払い、生涯に計5200万円の年金を受け取ります。30歳(85年生まれ)の世帯では、計2900万円を支払い、計6800万円が受給額です。倍率では、70歳が5.2倍。30歳が2.3倍で、年齢が下がるほど低くなります。5年前の前回試算では、4.7倍と、2.3倍でした。上の世代は上昇し、下の世代は変わりません。つまり、格差が広がった。自営業者らが加入する国民年金も、厚生年金とほぼ同じ傾向でした。
極めて分かりにくい年金改革案
年金の世代間格差は、かなり以前から問題視されていました。2004年には、当時の小泉内閣が、年金抑制策を導入。しかし、高齢者の反発に配慮して、物価が下落するデフレ経済では発動しないことをルールとしました。その後も、抑制策の完全実施を求める声が専門家らから上がるものの、政府も厚労省もこのルールに縛られ、対応は後手に回りました。政府が今年2月にまとめた改革案も、デフレ時に抑制できなかった分を先送りして、デフレ脱却後に適用するという、極めて分かりにくいものです。若い世代の納得は得られないでしょう。
年金は老後の暮らしの命綱であり、ある意味、医療や介護保険よりも重要な社会保障制度です。厚労省は「世代間格差が広がっても、公的年金の価値が失われない」と強弁しますが、超高齢社会を迎え、多くの国民が不安になっているのに、もう少し言い方がないものか。過度な負担を若い世代に押し付けることだけはしたくない。私は、そう思います。
[2015.10.30]
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 公的年金の世代間格差はますます拡大。広がっても価値は本当に変わらないのか?
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.h-yagi.jp/mt5/mt-tb.cgi/2315
コメントする