安倍首相、自民党総裁に再選。新しい「3本の矢」を示し、「1億総活躍社会」を目指すと高らかに宣言したが......。
「1億総活躍社会」――その実現性は?
自民党総裁に再選された安倍首相が、「強い経済」「子育て支援」「社会保障」を、経済施策の新たな「3本の矢」として示しました。驚かれた方も多いでしょう。2014年度で名目約490兆円の国内総生産(GDP)を20年度に600兆円にする、家族の介護を理由に離職する「介護離職」もゼロにするとしています。「目指すは1億総活躍社会」とも宣言しました。でも、実現性はどうでしょうか。
アベノミクスは、確かに成果をあげました。日本銀行による大胆な金融緩和政策で、急速に円安・株高が進み、企業の業績は改善しました。しかし、それは「大企業」の業績です。景気回復やデフレ脱却などの目標は道半ば。最近では、賃金もあがらず、個人消費も伸び悩んで、景気には停滞感があります。首相は「デフレ脱却は目の前で、アベノミクスは第2ステージに入る」と力説しますが、説得力には乏しい。日本を取り巻く世界経済の環境も不透明です。
経済成長だけでなく、政府は新しい「価値」「社会像」も示せるか
内閣府の試算では、実質2%、名目3%以上の奇跡的な経済成長率が続いても、首相の総裁任期が終わる18年度時点のGDP予測は、約554兆円。計算上は21年度に600兆円になるのですが、計画では、それを"前倒し"しているのです。介護離職問題では、特別養護老人ホームを急増させる方針を示しましたが、これは、これまでの「在宅医療」推進と矛盾する。元気な高齢者たちに社会で頑張ってもらうことは大賛成ですが、「1億総活躍社会」の標語は、経済力や立場の弱い人、マイノリティーの人たちの目にはどう映っているでしょう。
政権の支持率が急落しており、大胆な経済政策で人気や活気を取り戻したいのはわかります。けれど、進歩、発展、成長を「価値」とした20世紀型の社会からの転換が求められているのも事実です。新政策で成長軌道に戻れるかどうかで、アベノミクスの真価が問われますが、それと同時に、21世紀からの新しい「価値」「社会像」を示してほしいと思います。期待しすぎでしょうか。
[2015.10.9]
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