スズキとフォルクスワーゲンの提携解消交渉が4年かかって決着したが、前途は多難。次なる明確なビジョンを示すことが喫緊の課題か。
4年がかり。国際仲裁裁判所での係争に終止符
「まだ次のことまで考える余裕はないが、自立して生きていくことを前提にしたい」
自動車メーカー「スズキ」の鈴木修会長が、このほど東京都内で開かれた記者会見で発した言葉です。国際仲裁裁判所を舞台にした、ドイツの「フォルクスワーゲン(VW)」との提携解消交渉が、約4年かけて決着しました。"気持ちがすれ違った恋人"とようやく別れたわけですが、前途は多難です。
2009年、VWとの資本・業務提携を発表したスズキの期待は、すぐに失望へと変わりました。VWはスズキを子会社と見なし、スズキが期待する技術も供与しませんでした。2年後に、スズキから提携解消を申し入れると、話がこじれ、国際仲裁裁判所での係争が続きました。今回の裁定を受け、スズキは、筆頭株主のVWが保有する19.9%分の自社株をすべて買い戻します。
国際競争が激化するなかで、今度は強敵になるVW
しかし、"勝訴"したのがスズキとは言い難い。スズキはVW株を約300億円程度で取得しており、売却益は現時点で700億円程度になります。これに対し、スズキ株を約2200億円で取得した"敗訴"側のVW は、2000億円を軽く超える売却益を得る見込みです。また、同裁判所は、VWが主張したスズキの契約違反を一部認めました。巨額の損害賠償が発生する可能性があります。スズキの手元資金は、預金や売買可能株式など約1兆円とされますが、グローバル基準の「環境対応車」の開発を独自に行うには巨額な投資が必要で、厳しい事態といえるでしょう。
スズキは、これまで、軽自動車やインド市場で利益を生んできました。その軽自動車市場は今、新興国を中心に国際競争が激化中。生活水準が上がり続けるインドも、「ホンダ」や韓国の「現代(ヒュンダイ)自動車」が、中高所得層向けの車種で大攻勢をかけています。低価格な小型車開発を自力で進めてきたVWも、今後、スズキの強敵になるでしょう。独自路線に執着せず、次の提携先を探すのも選択肢の1つ。高い"授業料"を払った以上、明確な次のビジョンにつなげてほしいものです。
[2015.9.15]
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: スズキとフォルクスワーゲンの提携解消交渉が4年かかって決着したが、前途は多難。次なる明確なビジョンを示すことが喫緊の課題か。
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.h-yagi.jp/mt5/mt-tb.cgi/2264
コメントする