出版取次:栗田出版販売が民事再生申立て/業界再編?!中小・零細書店への影響は
栗田出版販売が民事再生申立て/負債134憶円超、出版取次では過去最大
出版取次で準大手の栗田出版販売株式会社(以下「栗田」/東京都千代田区神田神保町3‐25/代表取締役社長:山本高秀氏)が6月26日、民事再生法の適用を東京地裁に申請しました。帝国データバンクによると、負債総額は昨年9月末時点で134億9600万円。出版取次の倒産では過去最大の負債額となります。
近年は同業者との業務提携やグループ内での経営効率化などを進めていましたが、平成27年9月期の年売上高はピーク時の半分を下回る約329億3100万円に減少。10期連続の減収で、債務超過に転落していました。
崩壊目前?!淘汰進む出版業界
「出版取次」とは、書籍や雑誌を出版社から仕入れて全国の書店に卸す「問屋」のこと。日本出版販売(日販)やトーハンが有名ですが、栗田も業界4位の準大手として、出版界を盛り立ててきました。
しかし近年は、インターネットやスマートフォンなど、コンテンツの多様化による出版不況が叫ばれ、出版社や書店の倒産も相次いでいます。書籍の販売数が減退する中で、取次各社も減収基調続き。昨年は業界3位の大阪屋が楽天の支援を受けるなど、財務面の悪化が表立ち、淘汰・再編も避けられない状況に追い込まれています。
大手と一線画した個性的な「栗田スタイル」
Amazonをはじめとしたネット書店の台頭から、書店は都市部を中心に大型チェーン店へと画一化が進む反面、昔ながらの「町の本屋」も次々と姿を消しています。その状況下で、栗田は減収に喘ぎながらも、他の大手取次とは異なり、中小・零細規模の書店との関係構築に傾注し、地方活性化につなげるべく、意欲的な事業展開を行っていました。
栗田の取引先書店は全国で約1,200店舗。都内でも数こそ多くはありませんが、文京区千駄木の「往来堂書店」や千代田区東日本橋の「アスカブックセラーズ」など、ファンの多い個性的な書店が名を連ねています。
中小・零細、地方を救う「救済の魂」継承を!
また、筆者の知人が店長を務める東北地方の某書店も、数年前に倒産目前まで追い込まれたものの、栗田の子会社に併合される形で事業継続を果たしています。東日本大震災の被災地をはじめ、書店減少が著しい地域での新規出店も後押しするなど、実に気持ちのこもった営業活動が実感されるだけに、「栗田倒産」の報道は残念でなりません。
当面は業界最大手の日販の子会社「出版共同流通」が資金面などで支援し、来年春をめどに、大阪屋に統合される見通しとされていますが、これまで身を削りながら「救済」を続けてきた栗田の魂が、再編後も確実に継承されることを願います。
[2015.7.1]
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