東大研究グループ,新たな「医薬品開発」複雑な化学合成法を開発!医薬品開発へ時間は10分の1、コスト減少も期待
新たな製造開発、英ネイチャーに発表
東京大学の理学系研究科・理学部の研究グループは4月16日、複雑な化学反応を自動的に連続で起こし、医薬品を原料から直接合成する新たな製造法を開発したことを発表。化学反応のたびに生成物を取り出して、次の反応を繰り返す現在の合成法に比べ,高効率で老廃物も少なく医薬品の製造コストを大幅に下げられるとしています。成果は、4月16日付の英科学誌ネイチャーに発表しました。
東京大学の研究グループ・小林教授らは、化学反応を促す触媒をパイプに詰め、原料を流し込むだけで望み通りの物質ができると発表しています。
すでに純度98%の抗炎症剤を製造
新製法は、パイプのような装置の途中で複数の科学反応が起こさせ、実験では抗炎症剤に使う「ロリプラム」という物質の合成を試みたところ、8通りの連鎖反応を経て純度は98%。他の化合物にも応用できるといいます。
医薬品となる化合物の合成は,これまで反応容器に原料を入れ1つの反応を終わらせ,再び別容器に移して次の反応させる作業を繰り返してきました。複雑な構造を持つ化合物になると容器を移し替える回数が増え,手間やコストがかかることが難点でした。
製造法、触媒反応率は100倍,時間は10分の1
小林教授の研究グループらは、医薬品を原料から直接合成する新たな製造法について、「従来法と比べ触媒の反応効率は100倍以上で,合成に必要な時間は約10分の1に短縮できる」と話します。
医薬品業界は、他産業に比べ景気の良し悪しに関係なく,病気の治療や予防など生きていくため不可欠なことから安定した産業と言われています。現在,日本の医薬品市場は10兆円を超え、米国に次ぎ世界第2位の市場規模を誇ります。今後,国内市場は高齢化がすすみ、医療や医薬品に対する関心がさらに高まることは確実。今回の東京大学の技術革新で医薬品産業の活性化が期待されます。
医薬品に限らず香料や農薬へも適用の可能性
小林教授の研究グループらは、今回発表した原料から直接合成する新たな製造法について、医薬品に限らず香料や,農薬,機能性材料などの付加価値の高いファインケミカルの合成にも適用できる可能性を示しました。ファインケミカルの合成は、これまで日本の得意分野であったものの、ここ数年は中国やインド,東南アジア各国にシェアを奪われているのが実態。今回開発された製造法により各国との価格競争でも対抗できる高度技術とし、今後の医薬品産業への発展が期待されます。
[2015.4.20]
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 東大研究グループ,新たな「医薬品開発」複雑な化学合成法を開発!医薬品開発へ時間は10分の1、コスト減少も期待
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.h-yagi.jp/mt5/mt-tb.cgi/2101
コメントする