事業再生・会社再建・M&A・事業譲渡・会社分割・経営改善・債務・連帯保証問題に立ち向かうセントラル総合研究所・八木宏之のブログ

介護報酬:9年ぶりマイナス改定/「介護費引下げ」と「職員賃上げ」で現場は崩壊の危機!

このエントリーをはてなブックマークに追加  

介護報酬:9年ぶりマイナス改定/2.27%の減額決定
150122_1.jpg
介護保険から個々のサービスに対して事業者に支払われる「介護報酬」が、来年度(平成27年4月~)から全体で2.27%引き下げられることが正式に決定しました。
介護サービスの公定価格である介護報酬は、平成12年の制度開始以来、3年に一度見直しが行われています。5回目の見直しとなった今回、9年ぶりのマイナス改定となります。これによって、介護報酬は制度開始時よりも実質2.1%下がっています。利用料や保険料の負担は軽くなる反面、事業者の収入が減少することは不可避。3年前と比べると消費者物価は4%以上も上昇していることを考えても「引き下げは乱暴すぎる」と、現場からは反対の声が上がっています。

深刻な人材不足解消!賃上げに加算制度充実
現在の日本において、介護費全体の圧縮とともに課題となっているのが、全産業平均より約10万円低いとも言われる介護職員の賃金UPです。
介護の現場で予て問題となっているのは、深刻な人手不足ですが、人手が足りないため過酷な勤務状況にならざるを得ず、離職率も高いという負のスパイラルに陥っています。その最大の要因である賃金の低さを解消するため、改定では、職員1人当たり月12,000円程度の賃上げを実施するために加算制度も充実するとしました。

「介護費引下げ」と「介護職員の賃金UP」の両立やいかに
ちなみに、この賃上げに必要となる報酬1.65%分は、サービス単価を平均4.48%引き下げることで賄うという算段。現状、利益率が1割前後と比較的利益の大きい特別養護老人ホーム(特養)やデイサービス(通所介護)は大幅に引き下げられる見通しです。
 財務省は引下げの根拠として「特養の内部留保が平均3億円程度ある」という数字を持ち出していますが、この3億円には老朽化した施設の建て替え費用や職員の退職金などの積み立ても含まれています。また、特養でも3割近くが赤字であるとも言われており、介護報酬のマイナス改定によって経営悪化に陥る施設が出てくる可能性は非常に高いのです。

「社会保障充実」の矛盾?!現場は崩壊の危機
施設の経営が悪化すれば、職員の賃金アップもままならなくなることでしょう。結果として、人手不足も解消されないまま、介護サービスの質の低下や、必要な介護サービスを受けられない「介護難民」が増加する懸念もあります。
「社会保障の充実」を謳って消費税引き上げを断行した安倍政権。あれだけ介護を充実させると息巻いていた舌の根も乾かないうちに介護制度の崩壊を引き起こすなどということは、決して許されません。

[2015.1.22]

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 介護報酬:9年ぶりマイナス改定/「介護費引下げ」と「職員賃上げ」で現場は崩壊の危機!

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.h-yagi.jp/mt5/mt-tb.cgi/2000

コメントする

事業再生

セントラル総合研究所
セントラル総研オフィシャル
返済猶予・リスケジュール
www.re-schedule.jp
八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
著書の紹介はこちらから。

2024年3月

          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31