「所得連動」返済、「返済不要」型導入検討...滞納者増加の奨学金制度に変化/次世代育成で国家振興促進!
奨学金:返済額「所得に連動」で負担軽減へ/滞納者多数で「回収」から「救済」へ
日本国内で長く続いた景気低迷の下、国が学生に貸付けた奨学金の返済滞納の問題も深刻化しました。3年前から支援機構では、滞納者を個人信用情報機関、いわゆるブラックリストに登録する方針に切り替え、回収を強化しています。
しかし、国の奨学金事業を担う日本学生支援機構の調査によると、滞納者のうち83%が年収300万円未満とのこと。安定した収入が得られず、「返したくても返せない」という若者が増えているのです。
奨学金:返済額「所得に連動」で負担軽減へ/滞納者多数で「回収」から「救済」へ
その中で、「救済制度を充実させるべき」という声も高まっています。文部科学省の有識者会議は7月28日、奨学金の返済について、現行の毎月定額返済ではなく、所得に応じて返済額を変える「所得連動返還型」を導入すべきだとする報告書案をまとめました。返済者の負担を軽減し、少額ずつでも返済につなげて未返還金を減らすのが狙いです。
導入は、国民一人ひとりに固有の番号を割り振る共通番号(マイナンバー)制度で所得額を把握することを前提に検討。マイナンバー制度が平成28年1月開始を予定していることから、文科省は29年度の新規貸与者からの導入を目指します。
返済不要の「給付型」も導入検討へ
先の有識者会議は併せて、返済不要の「給付型奨学金」について「将来的には創設に向けての検討も進めていくべき」とする提言もまとめています。
日本の大学の授業料は先進国中、飛び抜けて高いというのは有名な話。北欧は軒並み無償、独仏は年額1万円台ですが、日本は国公立でも初年度80万円以上、私立は120万円を超す。しかも奨学金を受ける学生は先進各国で5割を超えるのに対し、日本は2割台。欧州では返済不要の「給付型」が多いのに対し、日本は全て大学卒業後に返済する貸与型がほとんど。政府による奨学金で給付型を設けていないのは先進国では異例とも言えます。
増加する企業奨学金
対して、近頃は民間企業による奨学金設立が活発化している印象を受けます。
楽天は7月30日、国内外の学生支援を目的とした、次世代育成のための奨学金プログラムを開始すると発表。海外の高校生と国内大学生を支援する2種類の奨学金を用意するとのこと。
マツモトキヨシHDは6月、東日本大震災の復興支援の一環として、岩手医科大学で学ぶ薬学生を経済的に支援することで、地域に貢献できる優秀な薬剤師を育成する奨学金制度を導入。給付型につき、返済義務はありません。
復興支援、女性進出...次世代育成こそ最大の振興策!
また、トヨタ自動車は、理系の女子学生を対象に奨学金を出す基金財団の設立を検討していることを明らかにしています。卒業後にグループ各社に就職した場合、返済を免除することも検討するとのこと。アベノミクスは女性の活用を成長戦略の柱に掲げていますが、製造業最大手のトヨタの動きが他の企業にも影響を与えることも期待されます。
国連の社会権規約は「無償教育の漸進的導入」を謳っています。高等教育の私費負担軽減は世界的潮流となっているのです。
ひとたび育った人材は一生、社会に貢献します。土地が狭く資源に乏しい、少子化も進む日本が発展するためには、次世代を担う人材育成が不可欠です。
●関連記事:「学生支援機構・奨学金返済の救済策を拡充!非正規社員増加で延滞金は増加傾向に返済猶予,猶予期間延長で負担減」[2014.4.26配信]
[2014.8.6]
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