企業の「私的整理」を後押し!事業再生ADR改正にむけ研究会発足/条件緩和で活用促進
「事業再生ADR」見直しに研究会発足
法曹界と学会の有識者による「事業再生ADR改正研究会(仮称)」が、「事業再生ADR」の見直しを検討していることが2月21日の日経新聞で報じられました。
ADRとは「Alternative Dispute Resolution」の略で、裁判外紛争解決と訳されます。裁判所ではなく、専門知識や経験を持つ、国が認めた第三者機関を交えてトラブルを解決するための手続きです。事業再生の分野においては、平成20年に事業再生実務家協会(JATP)が政府から認定され、過剰債務に悩む企業の事業再生のための事業再生ADRの制度運用が開始されました。
「全員一致」→「多数決」条件緩和で活用促進
事業再生ADRは裁判所が介入しない手続きであるため、民事再生法や会社更生法といった法的整理(倒産)とは区別され、私的整理に分類されます。銀行など債権者が債権放棄など金融支援をしやすくし、企業が早期に事業構造や財務体質の改善に取り組むよう促すしくみです。
ただし、決議には全員一致が原則の債権者会議において、債権者全員の同意が得られなければ再生計画は成立しません。結果、民事再生などの法的整理に移行する例も多く、制度発足から7年間で申請件数は50件にとどまっています。
政府は昨年、社債に限ってADR手続きでの全員一致の原則をやめ、多数決ルールを導入しました。研究会はこの条件の大幅緩和を提言する方向です。
事業再生ADRで債権放棄を受けるにも資金が必要
事業再生ADR活用は、企業にとって次のようなメリットがあります。
・評被害を受けにくい
・折衝の対象が金融機関に限定されるため、一般取引先との関係は維持できる。
・「つなぎ資金」の借入れが可能
・信用保証協会の債務保証など、公的保証を受けることができる。
・期間で再生が図れる
・一時停止措置から再生計画案の決議まで、3ヵ月程度を想定。
・負担を軽減できる
・「資産の評価損計上」「期限切れ繰越欠損金と債務免除益の相殺」など、税法上の特例を受けられる。
ただし、この手続きを利用できるのはJATPが定める規定に基づいた審査を通過した企業に限られており、正式な申請の前にデューデリジェンスや事業再生計画案(概要)の策定を行うため、申請前に発生する費用の支払いは免れられません。審査料は一律50万円(消費税別途)。その後、手続きの進行に伴い段階的に「業務委託金」、「業務委託中間金」、「報奨金」をJATPに納付する必要があるため、申込前から相当の準備が求められます。
誰のための「私的再生」か
また、無事審査を通過して正式申込に至ったとしても先述の通り法的整理に移行せざるを得ない場合もあるなど、二次破綻の可能性まで鑑みると、多くの中小企業にとっては「あまりにもリスクの大きい手段」という嫌気を禁じ得ません。日本経済を下支えする中小企業の救済を念頭に置くと「全員一致の原則」の前に審議すべきことがあるはずです。
[2014.2.26]
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