日銀短観、景況観測、景況調査、ともに中小企業「好転」、消費税増税後の景気対策が鍵
海外紙「数字が示すほど良くない」
昨年12月16日発表された日銀短観では、中小企業の業況判断が平成3年以来初めて「良い」が「悪い」を上回りました。昨年からのアベノミクス効果で大企業が業績を回復させるなか、中小企業にも波及効果が見られてきた一方、海外紙では「数字が示すほど良くない」と冷ややかです。
各紙が取り上げているのは、昨年9月調査の今年度の設備投資計画が5.1%増加から4.6%増に下方修正されたことです。アベノミクス第三の矢では国内での設備投資を促すものの、今年4月からの消費税率引上げによる影響で慎重姿勢は続いています。
フィナンシャル・タイムズ紙、「企業の設備投資は国内より海外を好んでいる」
フィナンシャル・タイムズ紙は、設備投資による税制優遇するものの、企業は国内より海外での施設、工場設備を好んでいると指摘。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、さらに中小の宿泊業や飲食サービスの感情指数が依然悪い状況と専門家の指摘を掲載。ニューヨーク・タイムズ紙では、解雇規制や労働者の賃金格差、女性の社会進出など労働市場改革が進んでいないことを批判しています。
日銀短観の数字では、中小企業の景気浮上が見られますが消費税増税前の駆け込みニーズとの声も聞かれ、4月の増税の影響が中小企業の景況感の明暗を分けそうです。
政府系金融機関2行の景況調査も「好転」
中小企業への融資を担う商工中金の中小企業月次景況観測をみると、昨年12月の景況判断指数は51.1ポイントと前月からは横ばい傾向ですが3ケ月連続50.0を超えています。商工中金では指数が50.0を超えれば中小企業の景況感が好転していると判断しています。
一方、日本政策金融公庫の中小企業景況調査では、昨年12月の売上指数は11.1ポイントとプラスは4ケ月連続。昭和63年の11.9以来の水準。利益額指数も9.1と平成16年以来の水準に改善しています。ただ、生産設備判断指数はマイナス11.5と前月から1.0上昇したものの依然マイナス圏内で推移します。
消費税増税、対策に5.5兆円
中小企業の景況感は、数字上では改善傾向にあるものの、4月の消費税率引上げ後の消費の落ち込みに懸念が残ります。安倍政権は、消費落ち込みに経済対策5兆5,000億円を計上。一時的な対策にならぬよう、設備投資など継続し消費に繋げることが重要となりそうです。
安倍首相は、経済3団体の新年祝賀会でも繰り返し賃上げを要請。経済の好循環をつくりだすボトムアップ賃上げにより、増税による停滞感が和らげられる結果になるかどうか、政府や経済団体の企業の実行力が注目されます。
*日銀短観(企業短期経済観測調査):年に4回、資本金2,000万円以上の企業を対象に業績や設備投資、雇用状況などを調査しています。
*商工中金(商工組合中央金庫):商工組合など中小企業によって組織された団体に対し金融の円滑を目的にされた政府金融機関です。
*日本政策金融公庫:平成20年に4つの政府金融機関が統合し発足。中小企業や起業向け融資を行う政府金融機関です。
[2014.1.11]
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