都銀・地銀、貸出残高が増加!実態は不動産投資や住宅ローンの恩恵、企業の設備投資は今一
貸出高4年2ケ月ぶり、都銀が地銀上回る伸び率
全国銀行協会は8月7日、7月末の都銀5行の貸出金残高が182兆1,863億円と前年同月比3.5%増だったことを発表。地銀64行でも貸出高の伸びは166兆6,737億円と同3.3%増でした。同協会の統計では、都銀の伸び率が、地銀を上回るのは平成21年5月以来、4年2ケ月ぶりです。
アベノミックス効果:都銀は融資増、地銀は住宅ローンが下支え
アベノミクスによる景気回復期待感によって大企業向け融資は増え始め、景気回復局面では、最初に恩恵を受けています。一方、地銀では、地元企業への融資の伸びは見られません。地銀では住宅ローンが下支えとなっていて、今のところアベノミクス効果は出ていません。
貸出金、不動産など資産購入へ、この後の消費は・・
大口の貸出では、JーREIT(上場不動産投資信託)や電力向けの融資が増加傾向。日銀では、先行きの資金ニーズもあり当面、緩やかな増加が続くと分析しています。不動産や株式などの資産購入やM&A(企業の合併・買収)への資金流出が見られますが、売却により新たな資金が消費に回る可能性もあり、市中に資金の流れを作ることが今後、大切になります。
日銀は、4月の異次元金融緩和後に金融機関から国債を大量に買い当座預金残高を積み上げました。アベノミクスにより資金ニーズに通貨供給量が増え始め、足元ではアベノミクス、日銀の意図した方向に進んでいます。
国債頼みの地銀、長期金利が上昇すれば窮地に
一方、増税前の駆け込み需要がピークの住宅ローンなど貸出残高を伸ばした地銀は、依然「国債頼み」の収益構造に変わりは見えません。この先、長期金利の上昇で国債価格が下落すれば窮地に陥る可能性も少なくありません。
日銀は、この先も異次元金融緩和を継続する方針を示し、国債の買取りで地銀へ資金を供給するだけに今後、低金利の貸出競争の激化も予測できます。失われた20年で地方経済は沈滞が続き、守りの体質が当たり前となった地銀には、業務や組織、人材などの変革が迫られます。
製造業の設備投資は、貸出全体の1割に見たず
日銀のデータでは、今年3月の貸出金の内訳は、設備資金総貸出額12.1兆円のうち不動産と個人(住宅ローンなど)で7.3兆円を占めます。これに対し、製造業の新規貸出は0.6兆円と1割にも満ちていません。住宅着工戸数も連続前年超えを記録するなど、消費税増税前の住宅駆け込みニーズと建設、不動産に対する貸出しであり、貸出金全体の動向は景気回復への判断とは言えないでしょう。
製造業の設備投資は長年の円高により国内投資へは期待も薄く、非製造業への貸出し増加が景気回復の鍵を握ると思われます。そのための成長戦略を今秋を待たずに前倒しで打ち出すことも安倍政権にとって重要になります。
[2013.8.24]
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