電子書籍市場は急ブレーキ!?進まぬ電子化、専用タブレットの伸び縮小の要因は「わかりにくさ」
専用端末機の出荷台数、予測93万台が47万台に半減
民間調査会社のMM総研は7月2日、平成24年度の電子書籍専用端末の出荷台数が47万台だったことを発表し予測した93万台を大幅に下回りました。前年度からは約4割伸びたものの、前々年度から倍増した勢いは衰えました。
専用端末のシェアでは、昨年11月に発売された米アマゾンの「キンドル」が38.3%で首位。楽天の「コボ」が33.0%、ソニーの「リーダー」が25.5%と続きます。電子書籍を読むだけでなく、使い道の広いスマートフォンやタブレット端末の急増で、専用端末の伸びは今年度も約1割増と控え気味です。
楽天、最新機種の日本発売は消極的
今年7月3日から5日まで、東京ビッグサイトでは「第17回国際電子出版EXPO」が開催され、端末各社からは最新の専用機種を展示。楽天は、今年4月から米国、英国、カナダで発売した「kobo aura HD」を出展しましたが、価格は190米ドルと他社よりも高め。日本市場での販売は、市場規模が小さいことを理由に消極的です。
米「キンドルストア」に登録されている書籍のタイトル数は、191万6,694作品と日本の12万108作品の十数倍、圧倒的な差があります。積極的に電子化を進めれば市場が形成されるのか、出版社や取次店、作者、開発者との利害関係など課題も多く残りそうです。
米電子書籍市場「紙と電子」同時出版で市場拡大
電子書籍の市場拡大に米国では、紙と電子の同時出版による相乗効果で市場が拡大されてきました。米アマゾンによると「キンドル」を手にする前の1年間で購入した紙の書籍を「1」とした場合、「キンドル」を購入してからの1年では4.62倍と増加。電子書籍が紙の書籍を減少させるのでなく、ともに販売損失機会を失わずに市場拡大に貢献したとしています。
米国同様のシステムが日本に合うかどうかは言えませんが、すでに「キンドル」のシェアは4割近く。専用のアプリをダウンロードすれば電子書籍が読めるスマートフォンやタブレットなど、音楽市場同様に今回も米企業主導であることが露呈されました。
平成32年までに電子書籍市場1兆円?
政府は、電子書籍市場を平成32年までに1兆円と目指すものの今のペースでは到底達成されません。書籍タイトルの少なさや、統一されないフォーマットなどまだまだ課題も多くあります。何よりも読者が、どの端末で、どこで行けば電子書籍が読めるのか「わかりにくさ」も致命的となっています。
現在の電子書籍ストアは、供給側の一方的な押しつけにも見え、書店で予測していなかった本を見つけたときの感動もありません。ウェブサイトで米グーグルがキーワードに対して関連情報を提供するように、電子書籍の存在を知ってもらうためのしくみが必要に思えます。
[2013.7.18]
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