財務強化、成長投資へリースバックの活用増加!?エレクトロニクス産業に続きイオンはショッピングセンター売却し貸借契約
円滑化法終了後もリスケ申請増加、1ケ月で17万件申請
中小企業金融円滑化法は、今年3月末に期限切れとなったものの、金融庁は、行政指導により金融機関に対しこれまで通り、円滑な資金供給とリスケジュール(条件変更)に対応するよう要請。同法終了1ケ月後、4月末の中小企業などのリスケジュールの申請数は、3月末から約17万件増え447万9,046件。住宅ローンは、同1万2,000件増え33万641件と依然厳しい状況が続いています。
企業では遊休資産の売却など成長投資へ資金調達を急ぎますが、6月23日には大手小売業のイオンがREIT(不動産投資信託)を東京証券取引所に上場するとメディアが報じました。同社が保有するショッピングセンターなどを売却し、上場時に3,000億円を資金調達するとしています。
イオン:REITを設立し店舗を売却、貸借契約で店舗営業は継続
イオンは、投資家などから資金を集めREITを設立し、ショッピングセンターなどを売却。売却後は貸借契約により、店舗の運営はこれまで通り継続するリースバックを活用します。同社は、平成26年2月期に埼玉・春日部市に200億円を投じ大型ショッピングセンターを開業するほか7店を出店。ここ数年の投資拡大で有利子負債も増加傾向にあります。
イオンは、リースバックを利用することで、バランスシートのスリム化など財務体質を悪化させることなく成長投資のための資金を調達。平成27年2月期には岡山や京都などへも11店の出店を計画。同社の長期化に渡る資金計画の実現は、この先の不動産市況や同社の競争力の強化、維持が投資家などに伝わるかにかかります。
NEC本社ビルや新宿住友ビル、西武百貨店池袋店でもリースバックを活用
リースバックは、平成12年、NECが経営改革策の一環で東京・港区の本社ビルを証券化し投資家などへ売却。売却益約600億円を調達し、現在も本社ビルを貸借し事業が継続されています。そのほかにも、住友不動産による新宿住友ビルや西武百貨店による池袋本店など大規模な資産の流動化は続きました。
日本のエレクトロ産業の海外競争力は失われつつあり、今年2月にソニーが財務基盤の強化と成長投資へ向け東京・JR大崎駅前の「ソニーシティ大崎」をREITを通じ機関投資家へ売却。前年度には410億円の売却益を計上したことを発表。2年前に完成したばかりの同ビルは、リースバックで貸借契約によりテレビ事業など同ビルで継続されています。さらに翌3月には、パナソニックが保有する東京・汐留の「パナソニック東京汐留ビル」をREITを通じ売却。10年のリースバック契約により売却後も東京支社として同ビルを利用しています。
事業所や工場、倉庫、住宅などリースバックは中小でも活用
ソニーやパナソニックなど大企業では財務強化と成長投資へリースバックを活用しますが、規模に関わらず中小企業でもリースバックは資金調達の手段として利用できます。保有する事業所や工場、倉庫、さらに住宅などリースバックにより、資金を調達して保有資産は貸借契約によりこれまで通り利用することが可能です。
リースバックは、企業にとってバランスシートから保有資産を外し資産を圧縮。資金調達も可能となる一方で、投資家などにとっては株式や国債などに比べ利回りも高くお互いのメリットが見られます。NEC本社ビルの事例からもNECに所有権はなくてもビルは誰がどう見ても実質的にNECの支配化にあります。返済の条件を変更する「リスケジュール」が公然となったように「リースバック」が中小企業の資金調達、財務強化の手段として新たな中小企業支援策ともなりえます。
[2013.7.15]
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