連帯保証人問題解消気運に水を差すマニュアルの存在!信用保証協会「保証人変更は認めず」実務解説書が事業承継の最大の弊害
経営者保証:破綻で全財産没収しないガイドライン策定へ
金融庁と中小企業庁は5月2日、「中小企業における個人保証等の在り方研究会」の報告書を公表。中小企業の経営者が融資の保証人となる「経営者保証」について、破綻した場合に個人財産が全額没収されない仕組みを盛り込んだガイドラインの策定を求めました。
今年2月には、法務省の法制審議会が第三者の連帯保証人を廃止する中間素案が発表されるなど、長年、個人保証を担保に融資する商慣行が見直されます。この状況のなか、今年3月にセントラル総合研究所の支援先である中部地区の中小企業経営者Y氏より保証人に関する交渉経緯が届きました。
経営者交代で2銀行は「保証人差し替え」、保証協会は「追加で2名の保証人要求?」
Y氏は、同地区のM銀行とS銀行より信用保証協会の保証付き融資を3件、約2億円を借り入れています。昨年末には、健康上の理由で新社長へ事業を承継。両行との間で取り交わされた保証人を無事に新社長へ差し替えました。同様に信用保証協会へも新社長への保証人差し替えを依頼しましたが、新社長の保証を追加し、Y氏の保証は外せないとの返答。保証協会は、2名の保証人を求めました。
当然のことながらY氏は納得いかず、両行を通じて新社長1名の保証を要求したものの、保証協会では、「規則になっているので」の一点張り。保証協会の「信用保証の実務解説・第5章期中管理」の「連帯保証人の追加または変更」には、
<引用>
連帯保証人の変更または解除は、原則として認めておりません。
但し、死亡・行方不明・その他保証人としての資格喪失による場合に限り認める場合があります。その場合、必ず他の保証人の同意を必要します。<引用終わり>
「信用保証の実務解説」:資産全てを失わないと保証人ははずれない
「その他保証人としての資格喪失」とは、健康上の理由で退いたY氏の全財産を失うという意味なのか、まさしく保証人は人質の由縁です。Y氏は最近になって「信用保証の実務解説」のこの項目の内容を知り、唖然と同時に腹立たしさを感じたと言います。
第一に、融資実行時にこの文言を把握していれば別の調達手段を模索したこと。第二に、保証人に関する法改正が改善に向かうなか、保証協会が旧態依然たる構えを示すこと。N氏は、これらに加え、他社でも同様に困惑することから経済団体や行政機関、弁護士会などへ働きかけ、改善を促す主旨を伝えるとともに、外部からの指摘を待つまでもなく保証協会へ検討を要請。要望書を信用保証協会会長へ提出しました。
保証協会の回答:個別事情を十分把握し、適切に判断するよう協会内で徹底
要望書提出から2週間強が経ち、保証協会会長より回答書がY氏へ届き、保証人差し替えの「申し出を受ける」との回答で、無事保証人は変更。回答書では、個別事情を十分把握し、適切に判断するよう協会内で徹底。今後、このような問題は生じることはないとの主旨でした。今回の件が氷山の一角となれば、法改正以前にも早急な行政指導なども必要です。
保証人関連の法案や指針など、法務省や金融庁、中小企業庁では審議会や研究会が設けられ議論されるものの、縦割りから省庁横断した意見・情報交換もなければエラーも起きがちです。今回の件でY氏は、一つの風穴を開けたにすぎず、この交渉経緯を広く伝え同じ立場の人の希望になりたいとしています。
●関連記事:「第三者の個人保証の次は経営者保証「全財産没収防止のルール新設」で合意!経営者の再チャレンジ後押し」[2013.3.28配信]
●関連記事:「第三者個人保証の排除、円滑な資金供給の障害/明治以前から引きづる民法改正!」[2013.2.21配信]
[2013.5.21]
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