復興の担い手確保!被災地の高卒求人7割増/「復興優先」で遠のく賃上げ
復興需要、企業再開で被災3県の高卒求人急回復
東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県で、来春高校を卒業する生徒を対象とした9月末時点の県内求人数が合計で前年同期の1.7倍に増加していることが、各労働局のまとめで分かりました。これは、金融危機が深刻化する前の平成20年以来、4年ぶりの高水準です。
この急増の背景には、復興需要による人手不足や被災企業の事業再開の進展があります。雇用の受け皿の拡大は、若者が地元にとどまる上で欠かせません。将来の担い手を得て、復興にも弾みがつくことが期待されます。
雇用のミスマッチで将来的な人口流出懸念
ただし、求人数の増加度合いだけを見て一喜一憂はできません。3県の9月末時点の県内求人数は72.4%増の計1万3,275人。昨年は震災の影響で激減しましたが、震災前の求人数自体、地域経済を維持するのに適正であったかという疑問もあります。
また、復旧・復興途上にある現地では、求人数が増えたとはいえ未だ業種面で偏りがあり、成人同様、求人と求職のミスマッチが拡大する恐れもあるのが実態。将来的にこれが解消されなければ、人口流出が先送りされるだけとも考えられます。
遠い「時給800円」/東北では助成利用も低迷
もう一点、重要なのは賃金の問題。最低賃金の底上げを目指す国の助成制度は、平成23年度の導入後、徐々に浸透してきました。最低賃金700円以下の都道府県が対象で、今年度は東北6県を含む33県が該当。4年以内に時給800円への引き上げを目指す企業に対し、設備購入など業務改善にかかる経費を最大100万円補助するという内容です。
しかし、東日本大震災の被災地を中心に申請件数は低迷が続き、東北では利用が伸び悩んでいます。東北の8月末までの申請は80件で、県別では青森8件(前年度実績1件)、岩手3件(0件)、秋田13件(17件)、宮城5件(2件)、山形25件(13件)、福島26件(2件)。全国計812件の申請に対し、東北分は1割にも届かないのです。
元々、東北の最低賃金は全国最低水準にとどまっており、民主党政権が目指す時給800円実現への道のりは遠いのが現状と言わざるを得ません。
岩手・宮城は復興優先、労働力確保に賃上げ迫られた福島
岩手、宮城両県の低迷は、被災企業などが震災復興を優先させた結果と見られており、福島県の大幅増については、福島労働局が「原発事故による県外避難が長引き、労働力確保のために賃上げを迫られた側面がある」と分析しています。
最低賃金改善の動きは進んでいるとはいえ、東北の水準は全国最下位に近い650円台半ばが中心。東北で最高の宮城でも現行675円にすぎず、生活保護の給付水準さえも下回っています。
人件費は事業を続けている限り長く続く固定費。一時的な助成で底上げしてもたかが知れているというのが現場の本音です。真の賃上げを実現するなら、政府による円高、デフレの解決が先決であることは間違いありません。
[2012.11.9]
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