再生医療の切り札「ⅰPS細胞」バンク構想始動/網膜移植で世界初の臨床研究なるか
注目の「ⅰPS細胞」再生医療の切り札に
京都大学:山中伸弥教授のノーベル賞受賞により、体のあらゆる細胞を作り出せるiPS細胞(人工多能性幹細胞)が一躍注目を集めました。神経細胞、血球細胞など様々な細胞に分化する能力を持ち、病気や事故等で失われた細胞を補填し、組織を修復する「再生医療」の切り札になると期待されています。
低コストで効率よく!心筋作成の新手法/京大研究チーム発表
京都大の中辻憲夫教授らのチームは、人のiPS細胞から、従来より低コストで効率よく、安全な心筋細胞を作製できる新しい手法を開発したと発表。10月26日、米科学誌『セルリポーツ』電子版に論文が掲載されました。
これまでの研究では高価な牛の血清成分などをiPS細胞に加えて作製していたため、コストがかかることに加え、動物由来の感染症のリスクもありましたが、そうした問題も解消されるとしています。1人の患者の治療に必要とされる10億個分の心筋細胞の培養にかかるコストが、従来の20分の1の約50万円に下げられるとのこと。安全・安価な新手法が開発されたことにより、臨床応用に向け大きく前進したと評価されています。
「細胞バンク」も稼動開始/難病患者由来細胞の活用
難病患者の細胞を集めて創薬などに生かす取り組みも始まっています。
これまでは採取の難しかった疾患の神経細胞も、患者の皮膚からiPS細胞を作り、神経細胞に分化させることで、病気の遺伝情報を持つ細胞が入手可能に。このiPS細胞を備蓄し、病気の治療などに役立てる「iPS細胞バンク」も稼動を開始しています。研究の裾野を広げるためにも、細胞の備蓄・保管、製作者と研究者の仲介を行うバンクが必要です。
世界初!iPS細胞の臨床研究申請
iPS細胞から目の網膜の組織を作り出し、患者に移植する臨床研究を、神戸の理化学研究所のチームが、近く申請することも報じられています。iPS細胞から目の網膜の組織を作り出し、「加齢黄斑変性」と呼ばれる網膜の一部が傷つく重い目の病気の患者6人にこの網膜の組織を移植し、視力の回復を図るとのこと。実施は来年4月以降になる見通しですが、iPS細胞を使った臨床研究は、厚生労働省の審査が必要になるため、移植手術のスタートは来年4月以降になる見通しですが、世界で初めてのiPS細胞の臨床応用になる可能性が高いと見られています。
国家再生の要となる医療研究
ものづくりが衰退しつつある日本において、医療技術の革新はよりどころとされます。しかし、研究費を含めた国の支援体制は米中に比べたらまだまだ。京都マラソンを完走して約1,000万円の寄付を集めた山中教授は先日、政府の会合で「研究スタッフをきちんと雇うには、年に80回マラソンを走らないといけない」と窮状を訴えました。世界に誇る研究者が、その本分に没頭できる環境づくりが急がれます。
●関連記事:「先端医療:再生医療「iPS細胞」の実用化加速/医療ツーリズムに弾み」[2010.1.10配信]
[2012.11.2]
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 再生医療の切り札「ⅰPS細胞」バンク構想始動/網膜移植で世界初の臨床研究なるか
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.h-yagi.jp/mt5/mt-tb.cgi/1070
コメントする