TPP参加前に戸別所得保障で日本の農業衰退?国内参入する輸入米に変わる消費者ニーズ
予算の使い残し1,120億円に今年度も前年度より多い予算計上
農林水産省は平成23年度の農家への戸別所得保障の支払額を発表。予算6,486億円に対して農家へ支払った額は5,366億円と1,120億円を使い残しました。要因は、同年から実施した畑作物の交付金1,578億円や、水田を活用した転作作物への交付金が2,218億円となり、農家の利用が想定を大きく下回ったとしています。
戸別所得保障の使い残しは、平成22年度の598億円の2倍近くに拡大。厳しい財政事情に企業や家計などに負担がかかるなか、今年度も前年度を上回る6,901億円の予算を計上。巨額の予算が残る可能性が高まります。
強い農業へ規模拡大、進んだ形跡
戸別所得保障の支払対象者は115万159人で、前年度から約1万3,000人減少。農業従事者の高齢化によるリタイヤのほか、農家の組織化、法人化が進み、複数の農家が1法人として受け取ったためとしています。農業の規模拡大が微増ながらも進んだ形跡が見られました。
戸別所得補償は、民主党の目玉政策で農家の経営安定と食料自給率の向上を図るものですが、「ばらまき」との批判もあり、補償のしくみや予算の査定に課題も残ります。民主党では、戸別所得補償の見直しを進めますが、法人化など一層の規模拡大を促し、消費者ニーズに応えられる農業変革が望まれます。
所得を補償なら貸した農地を「貸し剥がし」
戸別所得保障政策は、耕地の面積に対して支給される定額交付金と、コメの販売価格が下落した場合にその差額が補償されます。農家の規模や専業、兼業にかかわらず交付されるため、市場での競争原理が働かない上、規模拡大を図ることもできません。
戸別所得保障によって、小さな兼業農家も農業を続けるどころか、専業農家に貸した農地の貸し剥がしまで起こっています。これでは、TPP(Trans-Pacific Partnership:環太平洋経済連携協定)に参加する前に日本の農業は衰退の道を進みます。
割安感のある輸入米:外食チェーンや家庭でも受入れ
昨年の震災や原発事故などの影響でコメの価格は高止まりしていることから、割安感のある外国産米の参入が目立ち始めました。輸入米は、政府がコメの高い関税を維持する代わりに、一定の量の輸入を義務づけられたミニマムアクセス米と呼ばれ、豪州や米国、中国などから輸入されています。
ミニマムアクセス米は、一部の外食チェーンなど、しのぎを削る価格競争からこれらの輸入米を使い始めています。平成5年に輸入した際には、味や香りの違いから家庭には受入れられませんでしたが、デフレが長引くなか、家計を圧迫する状況に消費者のニーズも変わってきています。
[2012.7.3]
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