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日本のハイテク、「甘い誘惑」で海外流出/新日鉄:技術の不正流出「毅然と訴訟!」、経産省:調査これから?

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経産省:製造技術流出被害調査、製造業1万社を対象
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経済産業省は近く、電機や鉄鋼、自動車などの製造技術・情報流出の被害や防止策などについて、大手製造業や情報産業など1万社を対象に調査する方針を決めました。調査項目は、退職者による技術流出の有無や被害規模、再雇用先の把握、技術流出の防止策・管理法などが想定されますが、さらに現役社員転職の雇用先などヘッドハンティングをも前提においた調査が必要です。

増加する製造技術の流出に不正があれば賠償額は1,000億円

日本企業の技術流出は、アジアを中心に海外へ流動する技術者や情報技術の進展で、退職者や転職者を通じ増加しています。先月には新日本製鉄が元技術職社員を通じて高機能鋼板の製造技術を、不正に入手し使用したとして韓国の鉄鋼最大手ボスコや元社員へ約1,000億円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。

サムスンの世界トップは日本の頭脳のおかげ?
企業秘密に関与する社員の退職時には、製造技術などの秘密を漏洩しないなど秘密保持契約を企業と結ぶものですが、経済産業省の調査では契約を結ぶ企業は約2割にとどまります。現状は、鉄鋼業界に限らずあらゆる産業で日本のハイテク技術が流出する恐れがあり、技術の向上が逼迫する韓国や中国などへの流出は、企業はもとより国の後押しが必要です。

バブル崩壊後の混乱、早期収束よりの整理回収を優先する政治の責任
バブル崩壊後には、サムスンなど韓国企業が日本企業から半導体や家電分野の技術職社員を招聘。サムスンは、日本の頭脳によって世界のトップメーカーになったと言っても過言でありませんが、現在では、このような韓国メーカーに大苦戦。円高など後押しとなって日本企業は海外での競争力を失いました。

3月期大手電気産業:過去最大の赤字!これからはじまるその場しのぎのリストラ
今年3月期の日本の電機産業は、大手数社がが過去最大となる赤字も出るなど対策として、工場縮小や閉鎖、賃金削減、大規模リストラ策が報じられました。企業は、ハイテク技術の最後の砦となるブラックボックスを守るべき、技術職社員の維持や関連会社などへの配置転換などが求められます。その場しのぎのリストラは、数年後の命取ありともなりかねます。企業のみならず国が率先して国益を守らなければなりません。

サムスンヘッドハンター「ウチへおいで?」年収6,000万円、秘書・自動車・マンション付き

ロイターは、国内電機各社の開発環境や処遇が悪化すれば技術職社員自らが転職してもおかしくないと報じました。ロイター独自で入手したサムスンの人材リストには、リチウムイオン電池や太陽光発電、インバーターなど先端技術の社員の名が数十人並ぶといいます。ある技術者には、年収6,000万円以上、期間は3〜5年、契約金別途支給、秘書・自動車・マンション付きという破格の条件が提示されています。再び日本の最先端技術が流出し世界のトップが狙われようとしています。
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新日鉄高機能鋼板技術は40年の歳月、数百円の投資
甘い誘惑にはスカウトを受ける技術職社員にとっても、ライバルとなる韓国や中国メーカーに利用されていいのか葛藤もあるでしょう。契約期間が終了すればスカウトされた企業からリストラされ、その数年後には日本企業が再び海外競争力を失い、事業縮小へ追い込まれる可能性が高まります。
新日本製鉄の高機能鋼板の製造技術は、昭和30年代から約40年かけて開発され、開発費は数百億円に上ります。同社の「不正は許さない!」毅然とした訴訟は、海外競争を展開する産業への警告とも言え、判決が注視されます。

[2012.5.15]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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