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「AIJ投資顧問」年金運用基金を消失!市場参入自由化、日本版ビッグバンで規制緩和が裏目に

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投資運用会社265社中、外部監査ありは112社
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金融庁は、AIJ投資顧問の年金運用資金消失問題を受け、2月29日より投資運用会社265社を対象に一斉に実態調査を実施。投資家から受託した資産運用状況や運用先、過去の運用情報などを調査した結果、監査法人など外部からチェックを受けている企業は、全体の半数以下の112社にとどまることが判明しました。

2次調査実施対象運用法人、約100社
金融庁では、外部監査などの情報のほか、海外などで運用の実態が見えにくい投資運用会社約100社を絞り込み、AIJ同様の損失がないか2次調査を実施。運用に不透明な部分があれば証券取引等監視委員会に本格的な検査を実施させるとしています。

証券取引等監視委員会:損失補填、インサイダー取引など不正を監視
証券取引等監視委員会とは、証券市場で公正かつ公平な取引を行うことを目的に設置された金融庁管轄の監視機関。日本経済発展には、資金運用や調達の場となる証券市場が適切に機能することが不可欠で、取引の公正さや投資家保護に監視の目を行比から得なければなりません。同委員会では、市場の監視や一般からの情報提供に基づき、損失補填や相場操縦、インサイダー取引などを調査。問題が発生すれば金融庁へ行政処分を勧告し、必要に応じ強制捜査で告発も行うとしています。
AIJ投資顧問は、同委員会により調査が行われ、2月24日に金融庁より業務停止命令、3月23日には登録が取り消されました。

AIJ投資顧問、8年間、検査入らず野放し状態
金融庁は、AIJ問題発覚をうけ、外部によるチェック機能の強化に監査の義務化などを検討するとしています。当初、投資会社運用への監視規制は手厚く監視されていたものの、平成8年の日本版ビッグバン(金融システム改革)により規制緩和が広がりました。AIJのような投資一任業者でも、認可制から登録制へ緩和し、新規参入の場を拡大させ市場を発展させてきました。投資運用会社など新たに市場へ参入し市場拡大は得た一方、手薄となる監視体制に、野放し状態からAIJの運用資金消失事件が発生する結果となりました。

業界関係者の情報から証券監視委員会の検査
300社近くある投資運用会社への検査の実施は、平成22年度にわずか十数社。AIJ問題は、運用実績の不自然さを業界関係者が情報提供し、証券取引等監視委員会が検査に入り実態が判明。同委員会が最後にAIJを検査したのは平成16年と、以後8年間はチェックが入らず無検査状態でした。しかし報道されているコメントが、やや恣意的で偏っている風に感じました。浅川社長の参考人質問を一貫して聞いていると、投資運用会社の責任者として、とても高い資質を感じます。

企業年金:欧州債務危機が原因でマイナス運用に
厚生労働省では、年金基金などの運用指針となるガイドラインを平成9年に策定。分散投資を促し債券や、株式、不動産など、投資割合に条件を設けましたが、自由化の流れで撤廃。現在も自由度が高い一方、投資家への自己責任度は重くのしかかります。日本の金融市場のグローバル化による市場拡大、競争力向上に自由化は不可欠ですが、運用や情報開示の不透明さの排除も欠かせません。金融商品監視一本化など改善が必要ですが、過剰な規制強化は市場を衰退させかねずバランスが難しいところです。


金融商品取引き、投資顧問を魅力のある市場にすることが肝心
また監視や監査報告に規制をかければ、管理コストが跳ね上がり魅力の無い投資しか残りません。そうなると、比較的規制のゆるい海外の投資顧問会社に、資金が流れて国内の投資市場は衰退してしまいます。東京証券取引所の上場審査の厳格化で新興市場に上場する魅力が無くなって、アジア圏の新興市場に上場する日本企業が急激に増えたように、投資顧問など金融商品市場もまったく魅力の無いものになってしまします。

世界的金融危機が投資資産の消失に直結!
主要企業の年金運用の利回りは、欧州債務危機に伴う金融市場の混乱で、平成23年4月~12月期でマイナス4.75%低下。損失分は加入企業の補填や年金給付金の減額などで補われ現状に、どこで資産が運用されているのか小規模な投資家でも把握できるしくみが必要となります。これからの課題は情報開示の基準作りというところでしょうか。

AIJ問題、私達はこのように考えます。依頼者責任もあるのでは??
今回のAIJ投資顧問の年金基金消失問題で、問題の一翼は、年金基金から運用会社や投資顧問会社に一任されていて、基金に専門家がほとんどいない事実が明らかになりました。AIJ投資顧問の消失に問題があっても、それを見抜けなかった年金基金の担当者は、本当に被害者だといえるのでしょうか?少なくても基金の担当者はプロの扱う市場を知っているはずです。損失を早期に発見し大事な基金の保全をする立場の基金側理事には、何のお咎めなしとは偏った判断だと感じざるを得ません。これでプロの市場が形成できるのでしょうか。犯人探しだけでは業界の健全化はおぼつかないでしょう。
 
[2012.4.9]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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