米国ではゴールドマン叩き、日本はAIJバッシング、ブログに「嫌儲」思想、それでも不動産ファンド盛況!
米国学生ローン破綻増加:ウォール街占拠騒動の次はゴールドマン
米国は、ようやく雇用が上向き始め失業率も下がり、GDP(国内総生産)の約7割を占める個人消費の増加に期待がかかってきました。しかし依然、潜在的な失業率は高い水準にあると予測され、特に大学の学費高騰による学生のローン破綻も急増しています。昨年、国の金融機関救済への姿勢に怒りを向けたウォール街占拠運動の要因ともなりました。
占拠運動は沈静化したものの、3月14日付のニューヨーク・タイムズ紙に米金融大手のゴールドマン・サックスのデリバティブ(金融派生商品)担当者が同社を退社するにあたり手記を寄稿。全米でゴールドマン叩きの要因となりました。
ゴールドマン元社員:「金稼ぎ考え顧客の利益追いやる経営」
寄稿された紙面には、「金を稼ぐことを考えるあまり、顧客の利益が脇に追いやられる経営が続いている」と、同日退社したグレッグ・スミス氏の告発文が掲載。強欲の街と知られるウォール街で元社員が実名で会社批判することは異例のこと。占拠活動が収まりつつある街に再び衝撃が走りました。
ゴールドマン・サックスでは、欧州の顧客のデリバティブ利用の拡大が平成23年第1四半期の利益を押し上げたと社内リポートに掲載。同社の欧州部門は、顧客のデリバティブ利用に関する収入が142%増加し、縮小したM&A(企業の合併・買収)の収益を補ったと報告されています。同社の金儲けが顧客の損失へと繋がる構造は、日本のデリバティブ損失問題と変わりはないようです。
AIJ投資顧問、9年で儲け45億円、社長年収7,000万円
日本では、中小企業の巨額の年金運用資金を水増し、消失させたAIJ投資顧問が大問題となり、投資先に対する規制や、年金基金へのチェック機能強化など監督行政の不作為が露呈されました。嘘の運用実績で同社が得た報酬は9年間で45億円。自ら運用主導した浅川社長の年収7,000万円では、預けた被害者は到底納得できず呆れるどころか怒りを覚えます。長年野放し状態であった厚生年金基金の投資、運用の見直し、変革が必要です。
証券取引関し委員会の調査では、年金運用資金の損失は1,092億円に上り、手元には81億円しか残っていないといいます。衆院委員会に出席した浅川社長は、「騙すつもりはなかった」「取り返す自信はあった」など呆れた居直りが報道されました。
ブログに「嫌儲」思想、ネットに誕生:社会的事件増加が背景か
企業の利益、経営陣の報酬を最優先し一時的な富を得たとしても長続きはしないもの。ゴールドマン・サックスのように会社批判で退社し影響を与えるものから、社内から尊敬を集めていた社員、幹部が静かに去る場合も多く、その方が企業にとっては後々脅威となることもあります。米国では同社への批判は強まり、日本ではAIJ問題により年金運用への投資が厳しくなる一方、私募不動産ファンドなどへの投資が過去最高になるなど、明日は何が起こるかわからない世の中になりました。
ここ数年、ネット上には「嫌儲」という言葉が見られ、金儲けを嫌い非難する思想と言われています。ゴールドマンやAIJなど、お金に絡む社会的事件などの増加などが「嫌儲」を誕生させた背景にあるのでしょう。
[2012.3.30]
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