在日米国商工会議所:「金融サービス白書」、信用情報共有で健全な個別判断
1,000社の在日米国企業の視点
AACJ(American Chamber of Commerce in Japan:在日米国商工会議所)は9月20日、日本の金融システムにおける課題をまとめた「金融サービス白書」を発表。日本の金融システム強化を目指した具体的改革案が11項目上げられノンバンク関連でも項目が割かれ、言及、提言しています。
AACJには、現在日本国内で事業を行う米国企業が約1,000社加盟しています。震災後には、原発事故処理に関して、東電や自衛隊、米海軍、日立、米GEなどの積極的な対応を「妥当」と判断していました。日本のメディアとは違う視点、他国と比較して判断しているようで、同様の事故が他の国で起きれば、フクシマのように対応するのは難しいと述べています。確かに中国で起きれば、山を切り崩してでも土の中に埋めてしまうでしょう。
銀行、ノンバンク、クレジット共有の信用情報機関創設
AACJでは、事件や企業イベントなど米国本社や米政府高官と毎日のように情報交換が行われ、震災後には「日本は大丈夫だ」とメッセージを発信し続けました。米国務省が4月中旬にいち早く渡航自動勧告を解除したのもこうした発信を続けたことによるものでしょう。
「金融サービス白書」では、年収の1/3に制限した改正貸金業法(改正法)の総量規制についても言及しており、信用情報機関の整備を前提に一定の要件に基づく貸付の除外を求めています。銀行やノンバンク、クレジット業者など全てが共有できるポジティブ情報をも含めた信用情報機関を創設。信用リスク分析に基づいた個別の判断と、統計的に見た経験を活用し貸付を促すとしています。信用情報機関の目利きの正確さが問われることになります。
改正法見直しの必要性大
中小企業向け金融では、ノンバンクによる事業者向け融資規制の見直しを上げ、改正法による書面、記録保存の緩和で、競合となる銀行と条件を同一化すべきとしています。銀行には、書面交付や記録保存義務は課せられておらず、ノンバンクは事務コスト負担で立場的に不利となっているのが現状です。
上限金利規制を含む貸金業規制に関しても、「市場原理に基づかない規制は、結果的に信用供与を減らし多くの借り手がヤミ金に頼ることになりえない」と懸念を示します。改正法によって半数以上が正規貸金業者から借入れできないという調査結果を引用し、総量規制は、資金供給の大きな阻害要因になっている」と改正法見直しの必要性を訴えています。
審査に1週間では資金の必要なくなる
AACJは、これまでも銀行やクレジット業者、消費者金融と業態ごとに分かれた信用情報を包括し、データ化することでより精度の高い与信を可能にすると提言してきました。各業態ごとに信用情報機関が存在し、網羅的に照会できないという縦割り法令の弊害が指摘されます。
企業や個人の信用情報が全て統合されれば、より多くの情報で包括的な与信が可能となり、審査時間など無駄も省け健全な貸付が行なえます。大阪府が行った「金融機関からの借入に対する考え方」調査では、83.8%の事業者が「低金利の銀行、信金から利用する」が最も多く、「緊急の借入はすぐに必要。審査に1週間では資金の必要なくなる」が77%。「中小零細に事業計画書作る時間がない。貸付の際の用意すべき書類が多すぎ」が74.3%と続きました。この結果からもAACJ同様、改正法の関係機関を集結し論議を始めるべきです。
●関連サイト:オフィシャル「平成22年6月18日改正貸金業法完全施行:金融庁」
●関連記事:改正貸金業法総量規制:7割が生活資金借入できず、2割がヤミ金接触検討[2010.11.23配信]
●関連記事:改定貸金業法の副作用、9兆残高減!消える貸金業[2010.7.16配信]
[2011.10.4]
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