日韓EPA交渉7年のブランク:民間レベルでは既に交流!課題は両国間トラブルを乗り越える勇気
交渉中断:農産物、工業製品より政治的課題
米国を訪れている野田首相は9月21日、ニューヨーク市内で韓国の李大統領と会談。交渉が中断している日韓EPA(経済連携協定)の交渉再開について前向きに取り組むことで一致しました。両首脳とも両国の民間交流の強化などの姿勢では一致したものの、具体的な交渉日程の話までは至っていません。
外務省によると、日韓EPA交渉は平成10年、民間レベルで共同研究が始まり15年からは政府間で交渉が開始。16年までに6回の交渉会合を持ちましたが、その後中断したままとなっています。7年中断した要因には、日本の農産物保護や類似した工業分野での利害関係のほか政治的に敏感な課題の影響が大きいようです。
日本人の親韓国意識、年々向上61.6%
交渉中断後、局長級クラスの協議は重ねるものの竹島(韓国名・独島)の領土問題や靖国参拝問題などが障壁となり一向に進展しませんでした。この間にも民間レベルでは、日本のファッションやドラマ、アニメなどが韓国に受入れられ、BSアンテナは日本へ向けられるほどです。また、終戦記念日の8月には112万7,800人の日本人が韓国の観光地を賑わせ「反日」などの報道は目にしません。
一方韓国は、韓流ドラマにはじまりKポップなどカルチャー主導で日本に参入。スマートフォンや薄型テレビなども抵抗なく購入する日本人消費者も多くなりました。内閣府が毎年発表している「外交に関する世論調査」では、平成22年度、日本人が韓国に対する親しみ感は、「親しみを感じる」が61.6%と米国79.9%に次いでいます。韓国への親しみ感は、平成19年から54.8%、57.1%、63.1%と年々増えているのです。民間レベルでは両国ともに感情的には穏やかになってきていますが、民族的視点や政治問題にはまだまだ敏感な課題が残ります。
EPA締結慎重に:日本「輸出拡大」、韓国「国際競争力向上」
産業界では、韓国は円高を機に日本の製造業誘致を積極的に展開していますが、日韓EPAが締結されれば、両国ともに成長産業が類似しているため、慎重な交渉にならざるを得ません。
工業製品では、韓国製品に対し日本の関税はほとんどゼロに近い一方、韓国は日本の工業製品に平均で約8%の関税をかけています。もし日韓EPA締結となれば、自動車や電子機器など部品の多くを日本企業に頼る韓国は輸入増加で、日本企業が恩恵を受けることになります。また韓国は自動車、電子機器など低価格で急迫する中国や台湾メーカーとの国際競争力の向上に繋げる狙いがあるように思います。
日本企業の円高対策:技術向上の韓国から部品調達、選択肢
9月6~7日、都内のホテルで「韓国部品産業展」が開かれ、部品素材分野などの韓国企業103社が出展。日本からは日産や東芝など22社が参加し部品調達など商談が行われました。長引く円高に、韓国企業の技術向上で日本は韓国からの部品調達という選択肢が増えました。また、日本企業が韓国製部品を使用する分、EPA締結によってより日本製パーツの輸出拡大も図りたいところです。
有利なEPA交渉、不安定な政治とリーダーシップの欠如では不利
EPA交渉は、両国のメリット、デメリットが入り交じり経済発展や衰退の要因にも繋がりかねない重要な会合です。7年もの間、交渉が中断したままなのは、不安定な政治による強いリーダーシップの欠如に他なりません。両国とも市場は小さく輸出産業などのグローバル化は中小企業にも及んできています。より大きな中国やインド、ASEANなどの市場へ両国の成長、将来像をしっかり捉え、産業を発展させる決意を持って交渉、締結を願いたいところです。
[2011.9.26]
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